2021.03.12(2021.03.12 更新)
ユネスコエコパーク実務者研修を開催しました
報告
専門度:
▲二ホンミツバチが採蜜する照葉樹の森づくりを行う綾ユネスコエコパーク
テーマ:ユネスコエコパーク
日本自然保護協会
朱宮丈晴
ユネスコ未来共創プラットフォーム事業の実施
ユネスコ未来共創プラットフォーム事業は、世界や地域の課題解決に資するユネスコ活動の活性化に向けて、ユネスコ活動に関心や実績を持つステークホルダーに加え、SDGsの実現に向けた取組等を進める多様なステークホルダーの知見を得て、国内活動と国際協力における成果の往還に資するよう、国内のユネスコ活動拠点ネットワークの戦略的整備と先進的なユネスコ活動の海外展開を一体的に推進する体制を構築することを目的としています。
とりわけ、主要な3つの取り組みであるユネスコスクール、ユネスコ世界ジオパーク拠点、ユネスコエコパーク拠点に加えて、ユネスコ活動に関わるユネスコ協会、自治体、大学、企業、NPOと連携し、国内外への発信や海外展開を推進するためのプラットフォームを構築するというものです。
日本自然保護協会は、ユネスコエコパーク(以下BR)拠点の運営事業を文科省から委託を受け、2020年度から5年間の活動を行うことになりました。
SDGs関係者との連携
背景には、持続可能な開発目標(SDGs)の実現が、国際社会のみならず各地域の活性化の中でも喫緊の課題として共有される中で、我が国のユネスコ活動は、新たな局面を迎えており、日本ユネスコ国内委員会は、2019年10月18日に「ユネスコ活動の活性化について(建議)」を取りまとめました。
この建議では、「多様なステークホルダーの連携を深める戦略的なプラットフォームの構築」が提言されています。民間主体の協力活動として始まり全国に広がったユネスコ活動は、開発途上国を中心とした国際教育協力を行う一方、国内の世界遺産やジオパーク等に登録された自然や文化を教育や観光に活用するといった、地域活性化のための活動も展開してきました。
今後もグローバルな課題とローカルな課題をつなぎながら、世界と地域が共に持続可能な社会創りに向けて行動していくための取組の充実が期待されています。取組の充実に向けて、SDGs の実現に向けた諸活動全般に視野を広げれば、多くのユースや地方自治体、NPO、民間企業等が積極的に活動しています。
こうしたステークホルダーとの連携を強化して活動の輪を広げることができるよう、建議では、「SDGsの達成に向けて積極的に取り組むユースや地方自治体、NPO、民間企業等とともに、地域の課題解決につながるユネスコ活動の更なる充実や、活動成果の国内外への戦略的発信、国内のユネスコ活動と国際協力の成果の往還等を促進するため、世代や地域を越えて多様なステークホルダーが連携し、ユネスコ活動の未来を共創するプラットフォームの構築を図ること」とされています。
表1:ユネスコ未来共創プラットフォーム事業にかかる4つの事業
(クリックすると、別ウィンドウで開きます)
日本自然保護協会は、BRの活性化に取り組んでいます。具体的には、「日本のBRの制度強化に向けたグッドプラクティスの共有と実践活動」と題して、国内の各BRの課題を精査し、国外のグッドプラクティスの例およびジオパークなど他のプログラムの好例を文献および現地調査により収集し、10年に一度ユネスコに提出が必須の定期報告にあたってのポイント整理を行います。
また、日本の各BRの管理運営を推進することを目的に、実務者向けのワークショップを企画・開催し、BR関係者とともに国内の各BRの管理運営体制構築およびネットワーク強化を行います。今年は、新型コロナウィルスの感染防止のため、JBRNのメンバーが集合することも困難なため、ZOOMによるリモート研修としました。2020年度実施した研修は以下の5回です。
表2:2020年度ワークショップ(全5回)
実施日 | 内容・講師 |
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2020年10月19日 |
「ユネスコエコパークを通じたユネスコ活動の活性化」
|
2020年12月3日 |
「第一世代における定期報告作成状況と 第二世代の定期報告作成に向けた課題」松田裕之(日本MAB計画支援委員会委員長) |
2021年1月20日 |
「海外における定期報告作成事例と綾BRにおける定期報告作成状況」
|
2021年2月5日 |
「韓国のBRにおける定期報告作成状況」「Current Status of Bioshere Reserves and MAB Action Plan in Korea」 |
2021年2月17日 |
「ジオパークとユネスコエコパークの取り組みの違い」目代邦康(東北学院大学准教授) |
日本初の自治体からユネスコへの定期報告提出
綾BRは2012年に登録され、2022年に日本では自治体から初めて定期報告の提出を予定しています。日本は「日本のユネスコ/生物圏保存地域カタログ」として英文で4つのBRの概要と生物相リストを1999年と2007年にユネスコに10年ごとに行う定期報告として提出しました(日本MAB計画国内委員会1999、岩槻・鈴木2007)。
1999年は国から提出していますが、2007年は国の承認を受けて日本MAB計画委員会から提出するという具合で仕組みとして定まっていませんでした。その後、各国ばらばらだった定期報告の様式は2013年にユネスコにより定期報告の様式が定められました。したがって、2022年に予定されている綾BRの定期報告の提出は、管理主体が自治体となった第二世代のBRで、かつ新しい様式にしたがって提出される日本で最初の定期報告となります。
これをもって、核心地域と緩衝地域および移行地域をもつBRが申請から登録、10年目の定期報告の提出までの一連の期間が終了することになります。定期報告は、そのBRが過去10年間において生物圏保存地域で見られる変化をさまざまな側面から評価し記載していく重要な機能です。
これにより、各BRは外部評価を受けるとともに、目標に向けて現在の状況を把握し、何が欠けているのか、どのようにすれば改善できるかを自己確認することができます。定期報告には以下のような項目にしたがい10年間の変化を記載することになります。
- 生物圏保存地域
- 過去10年間において生物圏保存地域で見られる大きな変化
- 生態系サービス
- 保全機能
- 開発機能
- 後方支援機能
- ガバナンス、生物圏保存地域の運営・調整
- 基準と進捗状況
- 関係書類
- 連絡先
図1:ユネスコエコパークへの登録までの流れ
自治体が文科省の国内委員会へ提出し、国内委員会はユネスコに推薦する。自治体は申請までに日本MABネットワーク(JBRN)の研究会員になり、登録推進協議会や専門委員会を組織して申請に備えるのが普通です。