2020.12.04(2023.09.22 更新)
四国のツキノワグマとの共生を目指した養蜂の視察へ
報告
専門度:
テーマ:絶滅危惧種
フィールド:森林
こんにちは!広報会員連携部の後藤ななです。
日本自然保護協会(以下、NACS-J)では、2017年より絶滅寸前となっている四国のツキノワグマの保護を目的に、日本クマネットワーク、四国自然史科学研究センターとともに活動を進めています。
四国のツキノワグマの保護活動3年間の活動報告 ~剣山系付近にのみ16~24頭生息~
今回、10月14日~16日に、これからの四国のツキノワグマの活動をどのように発信していくか検討するために、徳島県、高知県にまたがる生息地付近に行ってきました。
この視察では、現地で活動を進めている四国自然史科学研究センターの安藤喬平さんにご案内いただき、地域で活動されている様々なセクターの方にお会いすることができました。その様子を、4回に分けてご紹介します!
ツキノワグマと共生できる養蜂を目指して
2日目には、NACS-Jの四国ツキノワグマ保全活動への寄付の返礼品にもなっている「四国のツキノワグマと共生する養蜂家のニホンミツバチのはちみつ」を作られている養蜂家・林さんのところへ。
林さんは、山奥のミツバチたちの巣箱に案内してくださいました。
そこには手を伸ばしても届かないほどの高さに置かれた巣箱と、電気柵と、普通のはちみつ作りでは見られない自動撮影カメラが!
これらには、ツキノワグマとはちみつとの適切な距離(ディスタンス)のための、深い理由があります。
はちみつは、ツキノワグマも大好物。これまでも何度も巣箱をクマに狙われてきた林さんは、近年、四国自然史科学研究センターと共同で、巣箱の周辺に電気柵を設けることで、クマと共生するための「ディスタンス」を設けることにしました。
電気柵の電気は、クマが怪我や気絶などはしないものの、痛さを感じ「ここには近寄れない」ということを覚えてもらうために設けています。
▲写真1:養蜂家の林さんと高い場所に置かれた巣箱、写真2:巣箱の下に設置された電気柵
通常のはちみつは1年で収穫を迎えますが、林さんのニホンミツバチのはちみつは収穫までに2年を要するそうです。2年の間、この山奥でミツバチたちは精一杯、野山の花々から蜜を集めてはちみつを蓄えます。
丹精込めて集められたはちみつをクマに狙われてしまっては、クマと人との軋轢が深まってしまうばかり。
「電気柵」はこうした現場の問題を解決するための糸口として、期待されています。
林さんや四国自然史科学研究センターの皆さんは、はちみつもツキノワグマも、いずれも豊かな森のしるしと考え、試行錯誤を繰り返しながら、うまくクマと共生できる道を探っています。
▲写真3:電気柵とともに設置されている自動撮影カメラ。クマが来ると、赤外線センサーが反応して写真が撮影されます。
▲写真4:養蜂家の林さん
お話のなかで、林さんがニホンミツバチをこよなく愛していらっしゃることがひしひしと伝わってきました。
ツキノワグマとの共生という点では、これまでも様々な苦労を経験されてきたなか、「クマは良いライバルのような存在」「クマたちも、子供たちにご飯を食べさせなければいけない。そうした母グマの気持ちもわかる」と語る林さんの言葉には、とても重みを感じました。
近年では、アカリンダニと呼ばれる外来ダニがニホンミツバチに寄生し、コロニー(群れ)自体が弱って死滅してしまうなど、新たな脅威も出てきているそうです。
森の豊かさの象徴ともなるツキノワグマとはちみつ、その共生を目指した林さんのニホンミツバチの養蜂をこれからも応援していければと思います。
つづく
NACS-Jでは、日本クマネットワーク、四国自然史科学研究センターと協力して「四国ツキノワグマ保護活動」を進めています。
世界で最も小さい島に生息するツキノワグマを守り続けるために、皆さまからのご支援をよろしくお願い致します。