2020.10.19(2020.10.19 更新)
環境副大臣に「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」へのNGO共同提言を提出しました
読み物
専門度:
テーマ:海の保全
フィールド:海一般社会砂浜
こんにちは!自然のちから推進部の志村です。
10月13日「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」のメンバーとともに、笹川環境副大臣にお会いして「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」への共同提言を手渡してきました。
海ごみは、砂浜に押し寄せる大きな課題のひとつ。特に、プラスチックは、いったん海に流れ出してしまうと回収は難しくなります。
有機物は最終的には微生物が分解してくれますが、プラスチックは自然界の微生物には分解できない分子構造のため分解してくれません。
破砕して細かくなればなるほど回収は難しくなり、現在の科学技術では細かくなって海に漂ってしまったプラスチックを回収する方法は見つかっていません。
そのために、少しでも形のあるうち、海に流れ出す前に回収する、砂浜に流れ着いたら拾って回収するアクションがとても重要になります。
ただし、一生懸命拾っても、現在はごみを増やす蛇口が開きっぱなしの状況です。皆さんは、ごみは拾っているよ、ちゃんとごみ箱に捨てているよ、リサイクルしているよ、とおっしゃるかもしれませんが、すべてのプラスチックをリサイクルできてはいないのです。
たとえば、世界最高水準と言われる日本のペットボトルのリサイクル率は約90%ですが、出荷本数が年間244億本もあるので、毎年24億本ものペットボトルはリサイクルできていないことになります*1。
日本政府としても、プラスチックごみは重要課題として対策が始まっています。今年7月から始まったレジ袋の有料化もそのひとつ。そして、「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」が9月1日に政府から示されました。
この「基本的方向性」では、「リデュースの徹底」といった言葉は使われているものの、実質的には代替品利用とリサイクルの推進、そして熱回収が解決案の中心となっています。
きちんと回収して燃やせばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、焼却すると二酸化炭素を大量に排出するので、気候変動による海面上昇、海水温の上昇でサンゴの白化などを引き起こします。また、リサイクルは素材の品質や機能の低下を伴うものがほとんどであり、現状では資源として循環していません*2。
そこで、共同提言で強調したのは「代替品や熱回収より、総量削減・リユースを」です。拾うのが追い付かなくなる前に、ごみの蛇口を閉めることに、もっと明確な指針と行動が必要とお伝えしてきました。
代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を ―「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」への共同提言を提出
もちろん、今すぐすべてのプラスチックの使用を中止するわけにはいきません。新型コロナウイルスなどの感染症対策に直面している医療現場では、重要な多くの資材にプラスチックが使われています。
しかし一方で、私たちの身の回りで、これプラスチックでなくてもいいんじゃないかとか、こんなに何重にもプラスチックで包装されてなくてもいいんじゃないかなと思うことはないでしょうか。未来の海とこどもたちのためにも、プラスチックに包まれたものしか売っていない、そんな状況を変えていきたいと思っています。
皆さんといっしょに砂浜を楽しみ、生き物を観察してわくわくする。それと同時に、調査研究をしてデータや科学的な根拠を集め、それ元に政策提言をする。日本自然保護協会は、日々こんな活動をしています。ぜひご支援をお願いいたします!!
*1 PETボトルの回収率(従来指標)の推移
http://www.petbottle-rec.gr.jp/data/transition.html
PETボトル出荷本数(表2)
http://www.petbottle-rec.gr.jp/data/weight_saving.html
いずれも、PETボトルリサイクル推進協議会のサイトより
*2 品質を落とさずにリサイクルされているのはプラスチック容器包装のうち世界でわずか2%と言われている(世界経済フォーラム、2016)