2020.10.05(2020.10.05 更新)
70か国以上の首脳・閣僚がグリーンリカバリーを訴える
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テーマ:国際生物多様性条約
こんにちは、国際担当の道家哲平です。
2020年9月30日、第74回国連総会(今年は、国際連合設立75周年)の特別セッションとして、国連総会ネイチャーサミットがオンラインで開催されました。
新型コロナ感染拡大の影響で国際会議が軒並み延期されていますが、生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)は、元々、2020年11月に中国昆明(こんめい)市で開催される計画でした(現在2021年に延期が決まっています)。今回の国連総会ネイチャーサミットは、CBD-COP15に向け、愛知目標に代わる次の目標の合意に向けた交渉の渦中にあって、首脳・閣僚の新目標合意への意欲的なメッセージを引き出し、危機にある生物多様性、ひいては、危機にある私たちの社会を持続可能なものにするためのきっかけの一つとしようと計画されていました。
ネイチャーサミットの動画は、YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=5WoQ0JjMzP8)で視聴することが可能です。
アントニオ国連事務総長を始め、国連機関の代表、各国の首脳・閣僚が相次いで発言を行っているほか、ユースや先住民地域共同体の代表などからも力強いメッセージがありました。
日本からは、小泉環境大臣が発表。ポスト2020枠組みには、社会経済システムのリデザイン(再構築)と、分散型社会への移行の重要性を指摘しました。社会経済システムの再構築については、ESG投資が6倍になったことや、認証パームオイルの推進などサプライチェーンの見直しなどが進んでいること、取り組みを加速させるために数値目標を設定し、社会で目標を可視化することが大事と主張し、企業への期待を発信しました。
分散型社会への移行では、里山イニシアティブのアプローチを紹介し、地域経済や文化・営みの再活性を地域社会の人々と推進していくことの重要性を発言しています。里山イニシアティブのパートナーシップを100団体に広げていくことを目指すと発信しました。
この会合に先駆けて、76か国の首脳が、生物多様性の公約を掲げる動き「LEADERS’ PLEDGE FOR NATURE United to Reverse Biodiversity Loss by 2030 for Sustainable Development(自然に関するリーダーの公約:持続可能な開発実現のための、2030年までに生物多様性の損失を回復に戻すための連帯について)」がありました。
この動きでは
- 自然や気候対策を意識した新型コロナからの復興
- 意欲的で社会変革につながる生物多様性ポスト2020枠組みの設定
- 生物多様性損失・土地改変・淡水の喪失・海洋劣化・森林伐採・汚染・気候変動などの課題を一体として取り組む
- 消費と生産の在り方の見直し
- パリ協定の公約強化
- 環境犯罪の撲滅や法制度の強化
- 生物多様性を多様な産業や政治課題に主流化する
などの共通7項目の他に、独自の宣言を行うリーダーの声を聴くことができます。
公開時9月28日は60か国でしたが、続々と各国が参加し、10月5日時点で76か国となりました(各国の報道は、ニュース制作のタイミングで数字が異なっているようです)。
なお、残念なことにこちらの取組には日本からの宣言は現在ありません。
本イベントの実質的な運営を担った国連環境計画・生物多様性条約事務局からは、多くの首脳・閣僚の力強いリーダシップが示されたこと歓迎するとともに、現在、人類が分岐点に立っていること(humanity at Crossroad)を認識し、意欲的な目標設定とあらゆる省庁(Whole of Government)とあらゆる社会(Whole of Society)がこの自然の危機に立ち向かい、自然を回復の道筋にへといざなう行動をとるべきだとのメッセージを発信しています。
詳細については国連のプレスリリースをご覧ください(※英語)。
Historic UN Summit on Biodiversity sets stage for a global movement toward a green recovery from COVID-19
(訳:新型コロナからの緑の回復に向けて歴史的な国連生物多様性サミットが世界的な動きを設定)
https://www.unenvironment.org/news-and-stories/press-release/historic-un-summit-biodiversity-sets-stage-global-movement-toward
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