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2020.07.03(2020.07.03 更新)

【子育てと自然】第2回:子どもの運動能力を高めるためにはスポーツクラブに入れたほうがいい?(前編)

読み物

専門度:専門度2

テーマ:環境教育子育て

フィールド:子育て

Q.小学生の子どもがいます。周りのお子さんがスポーツクラブや塾などで毎日忙しくしている様子をみると、遊ばせてばかりいては運動や勉強に遅れをとってしまうのではないか心配です。


遊びは脳や身体の発達の土台づくりの基本

ご近所に少し大きめの公園があり、午前中はお母さんと乳幼児期のお子さんが遊び、午後のある時間帯になると学校を終えた子どもたちが思い思いの遊びをしています。群れて遊ぶ子もいれば、野球のバットを振り回したり、サッカーボールを数人の男の子達が足で裁いていたり、少し疲れ気味の女の子達は柵に寄りかかりながらおしゃべりに夢中。そうした子どもたちの遊びを見ながら小学校4年生のお子さんを持つお母さんとおしゃべりをしていたときの話。「今の若いお母さんはご自分が小さい時に遊んでいない」ので子どもをどのように遊ばせて良いのか分からないのでは、といいます。

外遊びをするより机に向かって勉強することや学習塾と同じようにスポーツ系の塾に行かせる傾向にある、といいます。自分が遊んでいないと、どのように遊ばせれば良いのかがわからない、子ども同士の喧嘩にどれくらい介入すればいいのかがわからないから、公園について行くのは嫌という若い親御さんもいるようです。

親はともすると教育的なことには、熱心に取り組みますが、遊ぶことによる身体の発育には無頓着な傾向にあります。高齢期になると手すりにつかまらないと階段を上がれない、足腰が痛いなどの運動器症候群(ロコモティブシンドローム)が増えてきますが、そうした症候群の予備軍が子どもたちにも表れてきているといいます*1。かかとをつけてしゃがめない、腕がまっすぐ上がらない、骨盤が硬くて前にかがめないといった子どもの運動器の異常を指摘する声が多くなり、文部科学省も抜本的な対策に手を付けはじめています。

子どもの遊びには名前が付いていたりします。例えば、「みたて・つもり遊び」は何かになったつもりで遊んだり、代用品を本物に見立てたりして遊ぶことですし、「ごっこ遊び」はままごとに代表されるように生活の中で体験したことを再現して○○ごっこを楽しむのです。また構成遊びは自分で工夫したり、組み立てたりして遊びます。でも大事な遊びは自然の中での「名もない遊び」で身体全身を使って遊ぶことです。

身体の発達には順次性があり、遊びは脳や身体の発達の土台づくりの基本といえます。スポーツでは鍛えることの出来ないしなやかな身体の動かし方の獲得や、子ども同士が「群れ」て遊び、互いに刺激し合うことで脳のホルモン分泌が促進されるのですが、こうした力はスポーツ塾や学習塾では期待できません。自然の中で遊ぶことによる子どもの「遊び」の効用をいくつか紹介していきたいと思います。

自然の中の遊びは、スポーツでは鍛えられない身体の運動能力、敏捷性を鍛える

子どもが自然の中で、身体を動かすことはスポーツとは異なる体の動かし方をするので、学校の体育や特定のスポーツでは鍛えられない身体の運動能力や敏捷性の獲得につながります。例えば、森の中で斜面を登る遊びは背筋や腹筋を使うことになり、背骨や骨格の成長の促進につながります。また川や海辺で岩を上ったり、石の上を飛び跳ねて遊ぶことにより敏捷性や身体のバランス感覚を養うことになります。よく若い方が電車で床に座ったり、足を投げ出して座ったりしている光景をみますが、身体全体の骨格のバランスや背筋力が十分に育っていないからといえます。
一方、子どもは 小さな怪我をたくさんすることで、大きな怪我を避けることができるように身体能力を獲得していきます。さらに、ちょっと危険なことにチャレンジすることで恐怖心にも打ち勝つことで自立心を身に付け、さらに危機察知や危機回避をする、いわば“第六感”も、遊びによって鍛えられるのです。

ですから子育て期においては、お子さんを多いに外遊びをさせてください。また自然の中で遊ぶことによって自然の変化、例えば緑の色も日々変化に気がつくし、木々の葉のつくりや葉脈のカタチも木の種類によって異なることを発見したり、そのことを親子や友だちと話ししたり、共有することで言語の獲得にもつながり、子どものボキャブラリーを増やしていくことになります。もちろん図鑑で調べることで子どもの生活世界は深まり、広がっていきます。 (後編へつづく)

*1NHK「クローズアップ現代」2014.4.23放送

回答者:小澤紀美子
東京学芸大学名誉教授。専門は環境教育学。子どもたちの意欲や探究心を引き出しながら展開する「環境教育」を教育

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