2020.06.03(2020.06.04 更新)
10年のキーワード「良い取り組みは生まれているが不十分」ともう一つ
イベント報告
専門度:
テーマ:生物多様性地域戦略人材育成
フィールド:愛知目標
2020年5月16日にオンライン上で開催されたシンポジウム「いしかわ・かなざわから発信する生物多様性10年のあゆみ ~持続可能な次の10年に向けて ~」に、(公財)日本自然保護協会(NACS-J)スタッフで国際自然保護連合日本委員会事務局長を務めている道家哲平が、パネルディスカッションに出席をしました。
国連生物多様性の10年の始まりの地で振り返るこの10年
2010年に愛知県で開催された生物多様性第10回締約国会合(COP10)では、生物多様性を守っていくための愛知目標が採択されました。そして2011~2020年を「国連生物多様性の10年(United Nations Decade on Biodiversity)」と定めて、愛知目標の達成を目指してきました。
2020年はこの10年の節目の年であり、「国際生物多様性の日」である5月22日を記念し、「国連生物多様性の10年」のキックオフシンポジウムが開催された石川県での10年の活動を総括し、次の10年に向け、生物多様性とどのように向き合い持続可能な地域を作っていくかを考えるという趣旨で、開催されました。
本イベントは当初石川県金沢市で開催予定だったものが、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点で、オンライン上で開催されることになったものです。金沢で地の物を食べる機会は失われたものの、全国から、250名以上の方が、参加し、チャットなどを通じて活発な意見交換や質問が交わされていました。
もう一つのキーワードは、「世界と地域の連動と、切り離し」
パネルディスカッションに参加した道家からは、10年間を振り返り次につなげるキーワードとして、2つを提案しました。
一つは、「良い取り組みが生まれたが大きく流れを変えるには不十分」であったという振り返りです。
もう一つは、未来に向けてのキーワードとして「世界と地域が連帯してよいものを生み出す(Globalに考えて、Localに行動する)」という発想に加えて、「悪い影響を切り離す力を持つこと」が、地域にとって重要であるという言葉を伝えました。
これは、生物多様性に関心をもつグループでは数々の良い取り組みを生み出せたにもかかわらず、ネガティブな状況が別の関心事を持つグループから生み出されたことを評価しての意見です。
外来種を事例にとれば、外来種侵入経路の特定や優先度設定などが世界レベルで進み、日本においても地域根絶の事例や、評価は分かれますがテレビ番組の人気企画になるなど、外来種というテーマは普及を見せました。
一方、経済活性の文脈で、多国間の自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)が締結され人やモノの移動の量が大幅に加速されてしまい、全体として、外来生物の問題やリスクが広がりました。
これからの10年は、生物多様性のグループ以外の大きな動きを見据え、良い影響を取り入れ、悪い影響を切り離していく視点が、地域の持続可能性を考えるうえで重要な視点であるという主張です。
イベントの全体報告は、下記、ウェブサイトからご覧いただけます。
【開催報告】シンポジウム「いしかわ・かなざわから発信する生物多様性10年のあゆみ ~ 持続可能な次の10年に向けて ~」
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