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2020.04.30(2020.05.07 更新)

【配布資料】今日から始める自然観察「高さの違いで変わる磯の生き物」

観察ノウハウ

専門度:専門度3

今日からはじめる自然観察ページの見開き画像

テーマ:自然観察ツール

フィールド:海辺

【今日から始める自然観察】高さの違いで変わる磯の生き物(PDF/929KB)
<会報『自然保護』No.575より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

磯の観察をするのに良い季節になりました。

潮がよく引く大潮の日を選んで磯に出かけ、「高さ」による生き物の違いに注目して観察してみましょう。

石田 惣(大阪市立自然史博物館主任学芸員。専門は貝類の生態学)


水没する時間の長さ・一長一短

大潮の日、磯に出かけてみると、足もとにたくさんの動物や海藻を見つけることができます。ここでの注目ポイントは磯の「高さ」。高いところと低いところを比べると、見られる生き物がずいぶん違います。これはなぜでしょうか。

海では、一日の間にその水面の高さが周期的に変わります。これを潮の満ち干といいます。潮が満ちた時の高さである高潮線と、引いた時の高さである低潮線との間を「潮間帯」といいます。磯の潮間帯では高さによって干上がる時間の長さが異なります。高い場所では水没している時間が短く、干上がる時間が長くなります。低い場所では水没時間が長く、干上がる時間が短くなります。

とりわけ岩の上で固着して暮らす生き物や移動能力の低い動物にとって、水没時間の長さは重要です。高い場所では乾燥に耐える体が必要になります。また、食べ物を海水中のプランクトンなどに頼る場合は食事の時間も短くなります。呼吸に必要な海水を得る時間も同様です。磯の高い場所で暮らす生き物は、このような過酷な環境に適応する必要があります。

潮間帯上部から中部に生息する生き物の図

大潮っていつ?

潮の満ち干は月と太陽が地球の海面に及ぼす引力が関係している。太陽・月・地球が一直線に並ぶ時が、満ち干の差が最も大きい大潮となる。そのため大潮はおおむね新月と満月の日。
干潮時刻は、気象庁のウェブサイトで全国の主な海岸の潮位表を見て調べよう。大潮の干潮時刻の前後2時間ぐらいが磯観察に適している。

一方、低い場所では環境の厳しさは減るものの、暮らしやすいだけに多くの生き物が集まり、生き物どうしの生息場所を巡る競争が厳しくなります。また、水没時間が長いとカサゴやハゼ類などの魚やイシガニなどの大型のカニといった捕食者に襲われやすくなります。高い場所とは異なる適応が求められるわけです。

潮間帯下部から潮下帯に生息する生き物の図

危険生物について

カサゴの仲間には背びれや胸びれに毒を持つものもいますので注意しましょう。
特にハオコゼの背鰭の毒は強いため注意が必要です。イシガニのはさみ脚は、挟む力が強いので、挟まれないように!

このような潮の干満が、高さによる磯の生き物の分布の違いを生み出しています。環境の「こう配」によって生物相が変わる例は、標高差による森林帯の変化などがあります。これと同じ現象がほんの数十センチの間で見られるのが、磯という世界なのです。

 

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