2020.04.28(2020.04.30 更新)
【心もケアして外出自粛】コロナにまけるな!Stay Home with Nature
解説
専門度:
テーマ:環境教育子育て
(公財)日本自然保護協会(NACS-J)では、コロナウィルス緊急事態宣言を受け、職員在宅勤務の実施や、身近な自然観察系ノウハウの提供(一部、期間限定)を行い、コロナウィルス感染拡大予防に努めています。このページは、外出自粛に伴う心理的負担を緩和するための情報(翻訳)として、体系的にまとまっているイギリス政府作成の指針の仮訳を掲載しています。
翻訳の背景については、ページ下部(クリックすると、ページ内移動します。)を、ご参考にしてください。
指針は、14つの行動からなります(行動の詳細などは、指針(仮訳)をご覧ください)。
1. 周りとのつながり方を考えましょう
2. 他人を支えましょう
3. あなたの心配事について声に出しましょう
4. あなたの体の健康ついて気を配りましょう
5. 睡眠に気を配ろう
6. 普段と異なる感じかたとうまく付き合おう
7. あなたが取り入れるメディアや情報を整理しよう
8. 事実を入手しよう
9. 新しい習慣(ルーチン)を考えよう
10. 楽しいことをやってみよう
11. 目標設定をしよう
12. 頭をアクティブに動かそう
13. リラックスし、「今」に思いをはせる時間を持とう
14. 可能なら、1日、1回は、外に出るか、自然を取り込もう
自然保護の関係者に限らず、「心も大事に」するヒントを得ながら、コロナウィルス感染拡大を克服していきましょう
指針:コロナウィルス感染症(COVID-19)に関わるメンタルヘルスと幸福に関する市民向けガイダンス
Guidance:Guidance for the public on the mental health and wellbeing aspects of coronavirus (COVID-19)。Public Health England発表、 20203月31日更新
知っておくべきこと
コロナウィルス感染拡大は、私たちの日々の暮らしに影響を及ぼしています。政府や厚生当局(National Health Service)は、感染予防、拡大防止、治療を必要とする方への取り組みなどに必要なステップを講じています。
困難なことではありますが、ソーシャルディスタンスまたは“Stay at home”の注意に従うことで、皆さんご自身や家族、公衆衛生、地域は社会を支援し、守ることができます。
このような中で、退屈だったり、イライラを感じたり、孤独を感じることがあるかもしれません。気分が落ち込んだり、心配が募ったり、くよくよしたり、自分自身や身近な人の健康が心配になることもあるでしょう。このような出来事に人々は様々なリアクションをします。考え方・感じ方・日常行動の変化は、人によっても時期によっても多様です。自分の体と同じように、心についても、注意を払い、必要ならさらなる支援を得ることが大事です。
背景
・この指針は、コロナウィルス感染拡大が続く間、あなたの精神衛生と幸せについて、どのように気を配るかという助言を提供するものです。イギリス政府は子どもや若い人向けの指針も、提供しています。
・より一般的な、自身や周囲の人々の守り方、コロナウィルスにかかったかもしれないという感じたときの行動については、イギリス政府の別の指針をご覧ください。・このガイダンスは、状況の変化に応じて、更新されます。
あなたのメンタルヘルスと幸福のためにできること
周りとのつながり方を考えましょう:信頼する人との関係を続けることは、メンタルヘルス上大切なことです。直接の対面ではなく、電話、ビデオ会議、ソーシャルメディアを介して、日々出会う人や古くからの友人と、どのようにつながり続けることができるか考えましょう。
他人を支えましょう:あなたの周りにいる人をどのように支えられるか考えましょう。周りにいる人達にも、あなた自身の気持ちにも、この行動が大きな変化をもたらします。近くの友人や家族に連絡してみるのはどうでしょうか。あなたも参加できる地域の人々を支援するコミュニティグループはないでしょうか。あなたや周りも安全な形でコロナウィルスに関する各種の指示に従いながら、他者の支援をすることが大切であることは留意しましょう。そして、皆が感じる関心、心配や行動を受け入れてみましょう。
あなたの心配事について声に出しましょう:現状について、心配や恐怖、頼りなさを感じることが極めて普通のことです。この状況は誰しもが困難な状況であることに思いをはせ、あなたが何を感じ、家族や友人と共に、どのように克服しようとしているかを共有することは、周りを助けることにもつながります。そんなことができるとは思えないなら、イギリス厚生当局ヘルプラインを通じて話ができる人々や、つながることのできるオンラインサポートグループがあります。
あなたの体の健康ついて気を配りましょう:あなたが感情的に、精神的にどう感じているかが、あなたの体の健康に大きな影響を与えます。このような時には、不健康な生活パターンに簡単に陥ってしまい、それが今度は、さらに心に悪影響を及ぼします。ヘルシーでバランスの取れた食事をとること、充分な水分補給をすること、可能なら室内でのエクササイズや1日1回は外出することを心掛けるとともに、喫煙や飲酒、麻薬はさけるようにしましょう。
可能なら外出し、散歩したり、ガーデニングをしましょう(ソーシャルディスタンスの指針)にあるように他者と2メートルの距離を保持しつつ)。もし、自宅待機をしているならば、イングランド公衆衛生局発表の10分間体操や、イギリス厚生局のフィットネスビデオ集などもあります。スポーツイングランドも自宅でアクティブに過ごすためのコツを紹介しています。
睡眠に気を配ろう:不安や心配事があると、夜の健康的な睡眠を妨げることがあります。良い質の睡眠は、精神的、肉体的な感じ方に大きく作用するため、十分な睡眠をとることが大事です。
定期的な就寝パターンを保つとともに、寝る前にテレビや携帯画面を見ない、カフェインを取らない、リラックスできる環境を作るなど、良い睡眠環境を作りましょう。Every Mind Matters sleep pageでは、あなたの眠りの質を改善するための実践的なアドバイスを掲載しています。
普段と異なる感じかたとうまく付き合おう:たいていの人々はコロナウィルスに関するニュースについて心配をするでしょう。しかし、中には、問題と思えるほど強烈な不安を感じる人もいます。どこで情報を手に入れるか、といったあなたがコントロールできる範囲の物事に集中し、あなたの気分をより良い状況にもっていけるような行動を準備しましょう。今時点ではあなたのコントロールの外にあるものについて認識しておくだけで十分で、あなたの気分を不安にさせたり、困惑させたりする状況について頻繁に考えることは何の役にも立ちません。
The Every Mind Matters page on anxietyや、mental wellbeing audio guidesなど、不安感とうまく付き合う方法について情報提供しています。
あなたが取り入れるメディアや情報を整理しよう:24時間流れ続けるニュースや、何度も更新されるソーシャルメディアの発信は、あなたにさらなる心配をもたらすことでしょう。ニュースに影響を受けていると感じたら、感染拡大に関するメディア報道を見たり、読んだり、聞いたりする時間を制限しましょう。決めた時間のニュースだけにする、1日に、2-3回だけチェックするよう制限する、ことも有効です。
事実を入手しよう:コロナウィルスに関するあなた自身や周囲の人のリスクを正確に判断するのに有用な高い質の情報を手にすることで、合理的な予防ができるようになります。イギリス政府や厚生当局といった信頼できる情報源を見つけ、ニュースフィード、ソーシャルメディアから得られる情報や他人からもたらされる情報のファクトチェック(事実確認)を探そう。
不確実そうな情報が他人にも影響を及ぼすということを考えよう。信頼できる情報源によるファクトチェックがない情報を共有しないようにしよう。
新しい習慣(ルーチン)を考えよう:ちょっとの間、私たち全員の暮らしが変化をします。自宅待機やソーシャルディスタンスの行動をとる最中、あなたのこれまでの習慣(ルーチン)が乱されることになります。
これにうまく適合し、ポジティブな習慣を創造することを考えましょう。役立ちそうな活動に挑戦する(部屋の掃除や片付け、料理、体操)、価値ある活動に挑戦する(読書をしたり、友達と電話したり)。一日や一週間の計画を書き出してみるのも有効かもしれません。
楽しいことをやってみよう:不安だったり、孤独だったり、気分が落ち込んだりしているときは、楽しいことをやってみるとよいでしょう。お気に入りの趣味に熱中する、新しいことを学んだり、シンプルにリラックスの時間を取るなど、不安な思考・気分からあなたを開放したり、あなたの気持ちを上げてくれるに違いありません。
いつも楽しみにしていることが自宅待機でできないときは、どう応用してエンジョイできるかを考えるか、いっそ新しいことに挑戦しましょう。たくさんの無料オンライン授業や、オンライン飲み会やオンラインパブ、ストリームライブコンサートなど、ITツールを使った革新的な仕組みが作られつつあります。
目標設定をしよう:目標を設定し、達成することで、自身をコントロールしている感覚、目的志向をもつことにつながり、あなたがしたいこと、必要としていることが、家の中にいてもできるという思考を持つことにつながります。映画を見る、本を読む、オンラインで学習するといった目標でもよいでしょう。
頭をアクティブに動かそう:読書、執筆、ゲーム、クロスワードパズル、数独、ジグソーパズル、絵画。あなたに合った何かを見つけましょう。
リラックスし、「今」に思いをはせる時間を持とう:未来についての様々な感情や心配に役立ち、幸福感の改善につながります。リラックス技術は、不安感をうまく和らげる方法でもあります。Every Mind Matters and NHS’ mindfulness pageや厚生局マインドフルネスページなどで紹介されています。
可能なら、1日、1回は、外に出るか、自然を取り込もう:グリーンスペースで時間を過ごすことは、あなたの精神衛生および健康上プラスに働くでしょう。外出時間を思うほど多く取れなくても、窓をあけて新鮮な空気を取り込む、(可能なら)見晴らしのいい場所に席を作って眺める、自然光を取り入れる、できるなら庭に出てみることでも、良い効果が得られます。
ソーシャルディスタンスガイドラインに従うことで、あなたの家族や居住を共にしない他者と2メートル以上距離をとることで、1日に1度、体を動かすために外出することが、可能となります。
===仮訳ここまで===
訳注 Guidance:Guidance for the public on the mental health and wellbeing aspects of coronavirus (COVID-19)。Updated 31 March 2020 は、上記指針以降、「Staying at Home」(自宅待機に関する諸注意、資金面での支援などの諸施策の情報)、「治療中の方への諸注意」、「詳細な支援情報」、「心理的負担に起因する身体症状(早い脈拍等)が起きたときの対処」、「精神疾患に関する特別な事情の方への追加的助言」、「学習が困難な方への情報提供」、「自閉症の方向けの情報」、「年配者向けの情報」、「認知症の方向けの情報」という項目が立てられ、イギリス政府や関係当局、研究機関(医学・医療系学会)が発表している情報が、まとめられていますが、イギリスの支援策等に直結する情報のため、翻訳を割愛しています。
<翻訳に至った背景>
公益財団法人日本自然保護協会は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、在宅勤務や外出自粛の取組を強化しています。しかし、自然に触れることが大好きなNACS-J職員や自然観察指導員、NACS-Jのパートナー団体に限らず、在宅勤務や外出自粛は心理的負担が大きいものです。
人の心は、ストレスを創造的活動で解消することもありますが、自身や他者を攻撃することでストレスを解消することもあります。感染拡大につれ、コロナウィルス感染拡大に関する各種メディアやSNSに流れる情報も、危機の呼びかけ、不安感、猜疑心、攻撃的なトーンのものなど、ネガティブな印象を受ける発信も増えてきました。
この翻訳は4月27日に行われました。この前の週、東京都内において、公園に人が集中したことに批判がなされ、公園利用に対する自粛の要請が行われました。この一連の動きに懸念を抱いたことによるものです。
懸念の一つは、コミュニケーションの在り方です。日常品を買いに行く、散歩をする、公園に行くなどは、不要不急の外出ではないとしてそれまで容認されていました。しかし、外出自粛に協力して「皆が許される行動を一斉にとったことで新たな自粛の要請が生まれた」のです。これは、自粛を言うほうも受けるほうも、大変心理的につらいコミュニケーションです。
懸念のもう一つは、このような心理的負荷の多い状況にも関わらず、政府・自治体関係者の情報発信を見ると、感染拡大予防の瀬戸際であることから、コロナウィルスの危険性・3密・自粛の呼びかけが多く、気持ちの持ち方やメンタルヘルスについて役立ちそうな情報提供が後手に回っていることです。心のケアについて相談するセンターは各自治体充実していますが、その少し手前で、自分自身で考え、頭と心の整理整頓をするための、まとまった情報が必要だと感じました。
<イギリス政府の指針の選定理由>
イギリス保健当局は、普段から医療・医学情報に関するファクトチェック(××式ダイエットは効果的!といった情報に対し論文をもとに解説している)を丁寧に行うなど、市民向けのコミュニケーションに注力していること、(翻訳は割愛しましたが)“学習が困難な方へのメッセージ”など社会の多様性を尊重した指針を作成しており、NACS-J国際チームでは、この資料を評価し、翻訳しました。
その上で、①有用性:メンタルに関して日英に大きな違いはなく情報の多くが参考になること、②社会にポジティブな効果:他人を支えることなどが上位に来ており、ストレスを社会のプラスに還元しようとしていること、③自然への敬意:3密を避けつつ「自然とのふれあいの有効性を助言していること」から、紹介する素材として選びました。
ガイダンスの一部は、イギリスの施策や関係当局へのリンクで情報の補完がなされています。他の国や日本で、類似の情報がある場合には、リンクを充実させるなどの情報収集を図っていきます。
日本自然保護協会は、1951年に設立された日本で最も歴史のある自然保護団体です(理事長・亀山章、東京)。
「自然のちからで、明日をひらく。」をキャッチコピーに、会員や自然観察指導員、寄付者・支援者とともに、国際・全国レベルで自然保護活動や、自然観察会の推進などを進めています。この度公開した各種ツールも、支援者のご寄付や、全国各地の自然観察指導員のアイディアをもとに作成されたものです。
自然保護協会では、活動へのご支援を広く募っています(https://www.nacsj.or.jp/support/)