2020.03.05(2020.03.09 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「砂浜のお花畑を観よう!」
観察ノウハウ
専門度:
テーマ:自然観察ツール
<会報『自然保護』No.574より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
海風や波など植物にとって厳しい環境の砂浜にもうまく適応して花を咲かせる海浜植物がいます。
春から夏にかけて美しいお花畑をつくる植物たちを紹介します。
中西弘樹(長崎大学名誉教授 理学博士)
海岸は海から吹き付ける塩分を含んだ強風や海水の飛沫、砂や岩石など水分や栄養分が乏しい立地、夏は強い紫外線など、植物の生育にとって厳しい環境です。このような厳しい環境に適応した植物が、海岸植物と呼ばれるものです。
葉をよく観察してみましょう。潮風に負けないように、内陸の植物に比べ葉が厚く、水分をためることができます。また、強すぎる光を反射するよう光沢がある葉もあります。
海岸植物の中でも砂礫浜に生育しているものを海浜植物と言います。海浜植物はハマヒルガオ、ハマニガナ、コウボウムギなどのように地下茎を伸ばして繁殖するものや、ネコノシタ、ハマゴウなどのように茎が砂の上をほふくして広がるものがあります。したがって、しばしば砂浜一面にカーペット状に広がっています。
海浜植物は種子が海流で散布されるものが多く、これらは分布が広い特徴があります。ハマヒルガオ、ハマエンドウ、ハマボウフウ、コウボウムギなどは、北海道から南西諸島まで見られます。
広く見られる花が美しい海浜植物
ここに紹介する大部分の植物の種子は2カ月以上浮き続けることができ、海流で散布されるので、全国の広い範囲で見ることできます。
▲ハマヒルガオ(ヒルガオ科)
花の直径は4〜5cm。まれに白花もある。内陸のヒルガオに比べ、葉は円くて光沢があり、厚い。
▲ハマニガナ(キク科)
花の直径は2〜3cm。茎は地中をはい、葉を点々と地上に出す。葉の形から、別名ハマイチョウと言う。
▲ハマエンドウ(マメ科)
赤紫色の蝶形花。まれに白花もある。葉は無毛で光沢はない。エンドウを小型にしたような果実ができる。
▲ハマボウフウ(セリ科)
個体の大きさは北日本は大型で、南西諸島は小型のものが多い。若葉は刺身のつまや和え物にして食べられる。(保護されている場合もある。むやみに採取しないこと)
▲ハマゴウ(シソ科)
植物全体に香りがある。果実を集めて枕に入れて寝るとよく眠れる。まれに白花もある。
▲ネコノシタ(キク科)
花の直径は約2cm。和名は、葉がネコの舌のようにザラザラしていることに由来。
温暖化によって分布が拡大
海浜植物は、地球温暖化によってより北へと分布が拡大しています。その代表的なものがグンバイヒルガオで、日本では琉球列島から九州南部まで知られていました。
しかし、最近になって房総半島以南の各地で越冬し、花が咲いている個体が発見されるようになりました。
ヒレガクアサガオもこれまで日本では知られていなかった熱帯起源の海浜植物で、漂着発芽した個体が成長し、花が咲いているのが西南日本各地で発見されています。
その他、熱帯や亜熱帯の海浜植物の芽生えが日本各地で見られるようになりました。海浜植物の分布拡大は温暖化の指標と言えるでしょう。
温暖化で分布が広がっている植物
近年、分布が北上していることが確認されている海浜植物です。あなたの地域では、咲いていませんか?
▲グンバイヒルガオ(ヒルガオ科)
これまでなかった房総半島南部、紀伊半島南部などで越冬し、開花した個体が見つかっている。高潮で破壊された後、すぐにつるを波打ち際に向かって伸ばし砂浜を覆う。花の直径は約4cm。
▲ハマナタマメ(マメ科)
2017年、能登半島で定着しているのを発見。花の長さは約3cm。まれに白花もある。
▲ヒレガクアサガオ(ヒルガオ科)
近年西南日本各地で発見されている。漂着発芽後、半年以内に花を咲かせる。花の直径は約3cm。
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