2020.01.23(2020.01.30 更新)
辺野古・大浦湾ホープスポット登録を受けての ❝環境省交渉❞
解説
専門度:
テーマ:絶滅危惧種海の保全
こんにちは、広報会員連携部の幸地です。
タイトルを見てなんじゃこりゃ、と思った方もいると思います。私も書きながらそう思ったので、この場でご紹介しますね(この記事では、日本自然保護協会をすべてNACS-Jと表記します)。
※ 最近、NACS-Jからの発信で良く出る単語「ホープスポット(Hope Spot)」については、こちらのブログ記事などをご参照ください。
【署名募集!】日本初のHopeSpotに辺野古・大浦湾一帯が認定されました!
署名のお願いと、認定を受けての活動のご報告~辺野古・大浦湾がホープスポットに認定されました!
このホープスポットに認定されても国境を越えて工事を止めるような強制力は実はないのですが、これを受けて新たなアクションを立ち上げることが期待されています。
海外の事例を見ると、認定を受けて、
- 教育プログラムを立ち上げる
- 調査プログラムを立ち上げる
- 署名を集めて政府等に提出する
などさまざまなアクションが展開されています。
辺野古・大浦湾のケースでは「政府交渉 & 署名」をチョイスしました。
政府交渉について
政府交渉、聞き慣れない言葉ですよね?
聞きなれないですが、内容は文字の通り、いろいろな問題について政府の担当の方と交渉をすることです。今回の政府とは、環境省を指します。
「交渉」の中身をざっくりまとめると、「辺野古・大浦湾を今後どうやって守るつもり?IUCNからずっと問題だと言われてるけどジュゴンの保護どうするの?」という感じです。交渉自体は2019年10月25日のホープスポット登録の記者会見と同じ日に行いました。
12月10日には、「南西諸島のジュゴン」が地域個体群として絶滅寸前という評価をIUCNから受けてしまいました…
- 毎日新聞による報道:https://mainichi.jp/articles/20191211/k00/00m/040/274000c
- この評価を受けてのNACS-J声明:https://www.nacsj.or.jp/archive/2019/12/10541/
この日の参加者は日本自然保護協会職員、ジュゴン保護キャンペーンセンター、じゅごんの里に加えて、赤嶺政賢衆議院議員。環境省からは6人が参加し、こちらが送っておいた質問に答えてもらいつつ、関連するいろいろなことを聞いたり話したりという、約1時間半でした。マスメディアも数社取材として同席してくれました。
交渉を通して、保全策の詰めが甘いという指摘をしても、保全策の改善案を提案しても、「自分たちがこれまでしてきたことを継続する以外のことはできない(しない)」という環境省のお返事にとても消極的な印象を持ちました。
政治的な難しさが当然ある場所なので、いただいたお返事は想像の範疇と言えなくもないですが、「ジュゴンは絶滅しそうだけど別に急がないで優しく見守り続ける」と解釈できる旨のことを改めて言われてしまうと、日本に暮らす野生動植物は日本の財産なのに、国には守る気がないのかと…なんとも言い難い悔しい気持ちになります。
交渉の末、環境省からは、
- ミッションブルーについて調べて、どういう団体なのか、ほかにどのようなところが選ばれているのかなどの情報収集をあらためてすること
- 沖縄島南部や離島で、ジュゴン生息確認の調査などを今年度の予算で進めること
などをお答えいただきました。
★環境省への質問事項はこちらからご覧いただけます(PDF/168KB)
当日の質問からひとつご紹介します
> (質問1)このたび辺野古・大浦湾を含む海域が「Henoko-Ōura Coastal Waters」として新たなホープスポットに登録されることになった。この決定を受けての環境省のお考えをお伺いしたい。
この質問への答えは、「環境省としては、いちNGOの活動に見解を示すことはしない。米国のNGOであるMission Blueについては知らない。」ということでした。
後日、近藤昭一衆議院議員も衆議院の環境委員会で質問されましたが、小泉環境大臣の答弁も「環境省としてはNGOの活動には見解は述べない」とのことでした(2019年12月)。
質問は「辺野古・大浦湾はそういった認定を受けるような、世界的なレベルで自然が豊かなエリアですが、環境省はそのことをどうお考えですか?」という趣旨であり、交渉中にもそう伺ってみましたが、「いちNGOの活動」という視点でのお返事に留まってしまい、歯がゆく残念に思いました。
海草藻場は熱帯雨林の35倍ものスピードで二酸化炭素を固定できることから、いま気候変動対策のために大注目されています。辺野古・大浦湾の海草藻場は沖縄島最大規模の面積があります。セクシーな気候変動対策として注目していただけないのでしょうか…
(私にできること、なさすぎ…?)
いえいえ、署名のキャンペーンやってます!
ここまで読んでくださった方は、きっと辺野古・大浦湾の海の生き物たちの行く末を気にしてくださっている方に違いありません。
海の環境保全を、政治問題だからとうやむやにせず、日本の財産である唯一無二の自然環境として残したくはないですか?日本自然保護協会は残したいと思っています。
そして、同じように思う方も全国にいると思っています。だから署名をあつめて、内閣総理大臣の安倍晋三さんと沖縄県知事の玉城デニーさんに以下のお願いをします。
どうか、あなたの一筆もください!
内閣総理大臣 安倍晋三さん宛て
- 工事を一時中止すること
- 環境アセスメント終了後に明らかになったことについて、環境調査を行うこと
- 土砂や砂の調達地などで本事業にともなって生じる、環境への影響を明らかにすること
沖縄県知事 玉城デニーさん宛て
- 沖縄県の権限でかけられる保護の網をかけて、世界中にこの大事な海を本気で守るさらなる一歩を踏み出してほしい
- チリビシのアオサンゴ群集、長島の鍾乳洞、大浦川河口などの重要な場所を工事の影響から守ってほしい
この署名は、2月末まで集めています。
“政治的すぎて”人に伝えたり、話をすることが難しい話題かも知れません。ですが、この場所の自然は世界でみても素晴らしいものだということを今一度見つめ直して、ほんの少し勇気をだして、「日本にもジュゴンがすんでるって知ってる?」ぐらいの切り口から誰かと共有してみてください。
日本自然保護協会は、諦めずに辺野古・大浦湾をはじめとした、日本の素晴らしい海を守るための活動を続けていきます。
署名をして、希望の海のサポーターになる!(署名サイトに移動します)
参考リンク
日本で初のHopeSpotに辺野古・大浦湾一帯が認定されました!
辺野古・大浦湾 生きものたちの物語(会報『自然保護』No.547(2015年9・10月号))
「海を守るという願い」―シルビア・アールによるTED Prize 講演(You Tube)