2019.12.25(2020.04.17 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「コロコロ丸まるダンゴムシの暮らし」
観察ノウハウ
専門度:
テーマ:自然観察ツール
フィールド:身近な自然
<会報『自然保護』No.573より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
多くの人たちが知っているダンゴムシでも、知らないことがまだまだたくさんありそうです。
冬の間は、落ち葉や石、コンクリート片の下などで体を丸くして冬越ししています。探してみましょう。
皆越ようせい(自然写真家 日本土壌動物学会会員)
環境によって見つかる種類が違う
「ダンゴムシ」と言えば、大人から子どもまでよく知っています。「丸まる虫」、「球になる虫」で注目されます。しかし、中には花の苗などが食べられたと嫌われることもあります。
さて一般にダンゴムシといっているのは、住宅地や公園などでよく見るオカダンゴムシのことで、この近い仲間にハナダカダンゴムシがいます。名前の通り頭部の先端が少し突き出しています。
そのほかに海岸近くから平地、森の中まで広く生息するコシビロダンゴムシの仲間が30種以上、さらに砂浜に生息するハマダンゴムシなどと大きく分類されています。似ているものにワラジムシがいますが、さらに大きく言えばワラジムシも仲間です。ただしワラジムシは丸くなりません。
胸部の育房に幼体がいる間、ダンゴムシは体を完全に丸くすることはできません。丸くなるのは、硬い殻で外敵から身を守り、また乾燥や寒さから身を守るためと考えられますが、幼体を抱えている間は無防備になります。
ダンゴムシは、土壌動物の仲間です。ダニ(ササラダニ)をはじめ、トビムシ、ワラジムシ、ヤスデ、ミミズなどとともに、落ち葉や木切れ、時には小動物の死骸やそのふんなど、いろいろな物質を食べる雑食性です。つまり自然の掃除屋さんと言えるでしょう。
オカダンゴムシの寿命については、3~4年は生きると思われますが、はっきりは分かりません。飼育してみたら、誕生して1年後に親になりました(メス)。ダンゴムシをはじめ、土壌動物について、まだまだ分からないことがたくさんあります。さらに観察を続けましょう。
ダンゴムシいろいろ
▲丸まったオカダンゴムシ。
明治時代かそれ以前にヨーロッパから来たと言われている。住宅地でもよく見かける最も身近なダンゴムシ。
▲球になったトウキョウコシビロダンゴムシ(左/体長約8mm)とオカダンゴムシ(右/体長約14mm)。
お尻の先の腹尾節の形で見分けられる。コシビロダンゴムシは海岸近くから、平地、森の中まで広く分布する。
砂浜にいるダンゴムシ
▲ハマダンゴムシの幼体(左)と成体(右/体長約20mm)。
体色は、灰色、橙色、黒や白のまだら模様があるものなどさまざま。日本各地の海岸の砂浜などに生息し、日中は海藻や流木の下などの砂の中で見られる。夜にはい出して活発に動き回り、海藻などを食べる。冬は海水がかからない、砂の中、数十cm下に丸くなっている。
食べたり食べられたり!
▲古いコンクリートについた藻類を食べるオカダンゴムシ。
この時、コンクリートも食べている。落ち葉や落ちた果実、小動物の死骸などもよく食べる。古いコンクリートを食べたオカダンゴムシのふん(右)
▲トゲアリに襲われるオカダンゴムシ。
移動中のトゲアリとオカダンゴムシが突然出合って襲われた。トカゲやクモに食べられることもある。
▲冬は植木鉢の下などに丸くなって集まっていることが多い。観察したら植木鉢など動かしたものをもとの位置に戻そう。
すくすく成長
▲オカダンゴムシ誕生。
①春~夏、メスは胸部の育房に50~200個の卵を産み、孵化後もしばらくその中で育てる。育房の膜が裂けて幼体が、今にもはい出しそう。
▲②親から離れると、まず脱皮する。そして殻を食べる。
▲③体の後ろの部分を先に脱皮し殻を食べ、次に前部分を脱皮する。こうして体が大きくなっていく。
▲オスとメスは腹部で見分けられる。オスの腹部には交尾器がある。オカダンゴムシのオスは背中が黒っぽく、メスは背中が茶色っぽく黄色い模様が目立つ傾向があるが、亜成体では判別つけがたい時期がある。
おすすめ図書
著者:小杉みのり/写真:皆越ようせい『うまれたよ!ダンゴムシ』(よみきかせ いきものしゃしんえほん5)/発行:岩崎書店
著者:皆越ようせい『うみのダンゴムシ・やまのダンゴムシ』(ちしきのぽけっと9)/発行:岩崎書店
本コーナーは、エプソン純正カートリッジ引取回収サービスを利用されたお客様のポイント寄付によるご支援をいただいております。