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2019.03.19(2019.03.20 更新)

国際社会における絶滅危惧種保全ーー日本のジュゴン死亡から考える

解説

専門度:専門度2

テーマ:海の保全絶滅危惧種

国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)事務局長の道家哲平です。

日本に生息する野生のジュゴンが1頭死亡したという、痛ましいニュースが流れています。日本にジュゴンが生息していることを知らなかった方も多いのではないでしょうか?今回のニュースを受けて、皆さんに知っておいてほしいことをまとめました。

(日本自然保護協会は、IUCN-J事務局を務めています)

 

絶滅危惧種としてのランク

ジュゴンは、IUCNレッドリストで現在絶滅危惧種のランクのひとつ、危急種(VU)に指定されている世界的な絶滅危惧種です。

日本においては、環境省のレッドリストで最も危機の高いランクの絶滅危惧IA類 (CR)に指定され、文化財保護法の天然記念物指定も受けている保護動物です

 

世界にはまだたくさんいる?

生息域は、アフリカ東海岸からインド洋、東南アジアからオセアニアに広く分布していますが、その中でも日本の個体群は、生息域の北限に位置しています。

特定の地域を除き、全海域での個体数の推定はできていませんが、餌である海草藻場の世界的な減少もあいまって、個体数は減少傾向にあると評価されている生物です。

台湾近海もかつては生息の記録がありましたが、現在は、台湾のジュゴンは絶滅したと考えられており、東アジアのジュゴンの生息地は、日本だけとなっています。

 

「少ない」という事実は守らない理由にならない

絶滅危惧種の絶滅回避・保全は、日本が批准することで世界に実施を公約した環境諸条約や、国連持続可能な開発目標(15.5など)に掲げられた取組みです。

そこには、地域・国ごとの責任と、国際協力の中で自然を守ることの重要性が掲げられており、他の地域で充分な個体数がいるから、自国の個体群は絶滅しても良いなどという認識は一切ありません。

 

日本政府が取り組むSDGsでも

日本政府が実施に注力している、持続可能な開発目標(SDGs)の15.5は「自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020 年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる」と目標設定をしており、日本としての、緊急かつ意味のある対策が現在求められています。

3月19日、そのジュゴンの1頭が死亡していることが報じられました。

原因究明を進め、日本に生息する他のジュゴンの保護活動に役立てながら、緊急かつ意味のある対策につなげることが重要でしょう。

 

▲ IUCNレッドリストにおけるジュゴンの生息域。琉球諸島が北限であり、かつ、貴重な生息域であることが分かる(引用:International Union for the Conservation of Nature 2015. Dugong dugon. The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2018-2

 

国際自然保護連合 日本委員会(IUCN-J)とは

IUCN(国際自然保護連合)は、国・各国の省庁・NGOなどを会員とする世界最大の自然保護の連合体で、IUCN-Jはその正式な国内委員会です。

日本自然保護協会は1960年に入会、世界でも最も早く会員になった自然保護団体のひとつで、1988年からIUCN-Jの事務局をNACS-Jが事務局を担当しています。

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