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2019.01.07(2018.12.26 更新)

ヨーロッパの洋上風力発電所を視察してきました。

報告

専門度:専門度3

ティーサイド洋上風力発電所

テーマ:海の保全環境アセスメント

フィールド:

2018年9月20日~10月4日、デンマーク、イギリス(イングランドとスコットランド)を訪問し、洋上風力の情報収集を行いました。日本野鳥の会の企画に参画したもので、現地NGOと意見交換もできました。
風力発電は、日本でも陸上から洋上へ設置場所を広げようとしています。しかし環境影響予測は陸上と同じとはいきません。規模が拡大したり、別の開発事業が近くにある場合は累積的な影響評価も必要です。


印象的だった風車

多くの風車の中で印象的だった風車があります。ひとつは砂上の風力発電所スクロビーサンズ。イギリスでは、初期に建設された小規模洋上風力で、水深5~10mの浅い砂地に設置されています。予測では砂の変動は1㎝だったそうですが、実際には近くの砂州の露出の仕方が、大きく変わりました。海流や海底環境への影響予測は日本でも注意が必要な項目だと思いました。

もうひとつはティーサイド風力発電所です。ここはさらに陸に近く、現地に立つと目の前にずらりと風車が並ぶ印象です。斜陽となった鉄鋼の街には新たな観光資源のようです。感じ方は人それぞれでしょうが、水平線に並ぶ風車に違和感を感じました。

RSPB(英国王立鳥類保護協会)は、政府予算で行った調査で得られた数千の鳥類の行動データを洋上風力の影響予測にも役立てています。どの鳥がいつ何羽いるかという点の記録に加え、GPSで追跡した鳥の“線の記録”をもとに、風力発電所の影響・個体数変動を予測していました。NACS-Jも科学的根拠を大切にしていますが、データの質や量をもっと高めたいと感じました。

▲スクロビーサンズ洋上風力発電所を専門家の方々の案内で視察。雨の中を大型の高速ゴムボートで向かった。風車ができた後、砂が大きく移動した。(写真:風間麻未) ▲RSPBスコットランドでのレクチャー風景。鳥類に対する風力発電の影響をどのように予測するか、調査や研究の経験を紹介していただいた。(写真:風間麻未)

批判をはっきり言う友人関係

RSPBは影響が大きい場合は事業を止めるよう事業者に働きかけます。「ときには訴訟のように法律上の対立になることもある。政府にとって“批判をはっきり言う友人”のような関係」と言っていました。

環境アセスメントの手続きの流れは、日本と変わらないようにも思えます。ただし、事業者が客観的なデータを示すためRSPBに調査を依頼したり、事業者に依頼されたコンサルタントも、影響が大きければ計画を撤廃・変更した方がよいと指摘もするし、アセス初期には、事業者とコンサルタントと地域住民が徹底的に意見交換をするそうです。

日本では、洋上再生可能エネルギーを推進する法律が秋の臨時国会で可決しました。環境アセスメント法の基本的事項の見直しも進んでいます。今回得た情報も活かし、海を守れる環境アセスメントに取り組んでいきます。

 

▲飛行機から見えた建設途中の洋上風力。

 

担当者から一言

リポーター
自然保護部 志村智子再生可能エネルギーへの転換で自然が破壊されることのないようにするには、日ごろから自然のデータを蓄積することも大切。見守る目を増やしたいと思いました。

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