2018.12.25(2018.12.27 更新)
2018年度のニホンジカ捕獲試験を実施しました。
ご寄付報告
専門度:
テーマ:獣害問題
フィールド:森林
ニホンジカ(以下、シカ)の増加による環境への影響が日本各地で問題となっています。群馬県みなかみ町の赤谷の森では、被害が少ない低密度の段階でシカの管理・捕獲技術を検討するため、みなさまのご支援を受け、2018年10月29日~11月14日に罠を用いた捕獲試験を実施しました。
2018年度のニホンジカ捕獲試験については【こちら】からご覧ください
※ 本事業は、皆さまのご寄付で実施をしています。
赤谷プロジェクトエリアのシカは警戒心が高く、夜間出没が多いこともあり、本年度は鉱塩(塩のかたまり)でシカを誘引(おびき寄せ)した上で罠による捕獲を囲い罠・箱罠の他、くくり罠の実施を行いました。
- 囲い罠・箱罠
囲い罠・箱罠は、罠設置前はシカの出現がみられたものの、罠設置後は警戒され、出現を確認することができず、捕獲に至りませんでした。
誘引期間を延ばすほか、鉱塩の設置の仕方に工夫するなど、誘引方法を検討し、引き続き捕獲を目指していきたいと考えています。 - くくり罠
その他、赤谷プロジェクトではくくり罠による捕獲を実施しましたが、そちらでは1頭捕獲することができました。
<使用したくくり罠について>
通常のくくり罠は、けもの道などシカのとおりに道に罠を設置し、罠を踏むと足をくくられることで捕獲します。しかし、けもの道そのものはシカだけでなく、ツキノワグマやイノシシ等の他の動物も通るため、誤ってシカ以外の動物を捕獲する可能性があります。
一方今回検討したくくり罠は、けもの道から敢えて少し外れた場所に鉱塩を置き、けもの道から外れて誘引されたシカを狙うため、通常の設置に比べて鉱塩に誘引されない動物を誤って捕獲するリスクが減らせるという特徴があります。
今回はあらかじめ鉱塩で誘引した2地点に罠をそれぞれ3つ、計6個をかけて実施したところ、1頭のオスジカを捕獲することができました。
たった1頭かもしれませんが、期間・罠の設置数が少ない中での成果であり、捕獲努力量(罠の数×実施日数)に対する捕獲数という捕獲効率では、近辺でより高密度の地域で実施例よりも効率的な捕獲結果となりました。
低密度管理の実現のために
今回の捕獲結果は、低密度であっても、誘引材を用いたくくり罠では効率の良い捕獲できる可能性が確認されました。一方、まだまだデータ数が少なく、引き続き捕獲方法については検討が必要だと考えています。また、今回は捕獲に至りませんでしたが、囲い罠及び箱罠については、罠への慣らし期間を延ばし、捕獲に取り組んでいこうと考えています。
低密度管理の実現のためには、こうした捕獲技術だけでなく、だれが、いつ、どうやってとり、どういった資金をつかうのかなどの体制づくりも重要となってきます。
体制づくりに向けても、今年度は、地元の猟友会のみなさまとも意見交換・交流を重ね、一歩ずつ実現に向けて進んでいるとは感じるものの、目指す低密度管理の実現はまだまだこれからです。ニホンジカは年間1.2倍ずつ増えていく中、時間との勝負という側面もありますが、低密度管理の実現に向けて引き続き、取り組んでいきます。