2018.11.05(2018.11.05 更新)
急増するメガソーラー問題
解説
専門度:
テーマ:森林保全環境アセスメント
フィールド:湯宿温泉伊東市霧が峰和歌山市岡山市飯豊町日立大宮市
各地で大規模な太陽光発電施設(メガソーラー)建設による自然破壊が問題となっています。この問題に対するNACS-Jの活動、また、市民ができることについて解説します。
各地で軋轢を生むメガソーラー開発
今、環境省では大規模太陽光発電施設(メガソーラー)開発を含む環境影響評価(環境アセス)法の対象事業の範囲について検討会を開催して議論をしています。NACS-Jも検討会に呼ばれ、意見陳述を行いました。
メガソーラー開発による自然破壊問題はここ1~2年の間で急激に顕在化してきました。伊東市(静岡県)のメガソーラー開発問題では、地域住民や自治体は、森林が伐採されることによる土砂災害や、美しい海が濁るのではないかという懸念から計画に反対していますが、事業者は事業を計画通り進めるとして、軋轢が生じています。
NACS-Jには、この計画以外にも霧ヶ峰(長野県)や和歌山市(和歌山県)、岡山市(岡山県)、飯豊町(山形県)、常陸大宮市(茨城県)、湯宿温泉(群馬県)など、各地からメガソーラー建設による自然破壊の相談や情報が寄せられています。ここに挙げた事例以外にも全国各地に問題が生じているものと思います。
メガソーラーは環境アセス対象にすべき
現状では太陽光発電事業は環境影響評価法の対象事業になっていません。ですから環境アセスをする必要がありません。もちろん、自治体独自で太陽光発電事業を環境アセスの対象とする条例をつくっているところもあります。一方で国と同様に条例の対象としていない自治体も多くあります。こうした事情から、現在、森林を伐採するメガソーラー計画が各地で持ち上がり、地域での軋轢を生んでいます。
もともと森林だった場所を太陽光発電のために皆伐して違う環境に変化させることは、本来、地球温暖化という生物多様性への危機に対しての対策のはずだったものが、開発という行為による生物多様性への新たな危機になってしまうという本末転倒の事態を生み出しているのです。
メガソーラー開発は、環境影響評価法の対象とするべきです。現状のメガソーラー開発の進め方は、“地域”不在のまま外部がその利益を得るという構造になっています。これは、これまでの原子力発電をはじめとする中央集権的なエネルギー供給システムと同じではないかとさえ思います。NACS-Jでは、環境影響評価法の抜本的改正が必要だと考え、環境省に提言をしていますし、立法府への働きかけも行っています。しかし、法律を改正するには時間がかかります。
そこで皆様へ提案です。自治体に対して、開発に際しての地域住民との合意形成プロセスを経ることを義務化する条例を制定するよう働きかけをしませんか? 市民には憲法および地方自治法に基づき、地方議会に請願を出し、条例制定を促すことが権利として認められています。国民一人一人に認められた権利をしっかりと行使し、地域の状況に見合った再生可能エネルギー導入の方向性を見い出していくことが、今、私たちに求められているのだと思います。
辻村千尋(日本自然保護協会 保護室)
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