2018.10.26(2018.10.29 更新)
辺野古の海の緊急調査報告2~長島の洞窟~
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専門度:
▲ この島の中に洞窟があります
テーマ:海の保全
保護室の安部です。
辺野古・大浦湾での緊急調査にご支援・ご協力をくださりありがとうございます!今回は、洞窟の調査をご報告します。
※ 引き続きご支援をお願いしています、ぜひ緊急調査に力を貸してください!
8月31日に沖縄県により行われた公有水面埋立承認撤回により、辺野古の埋め立て工事が停止されています。日本自然保護協会ではこれまで立ち入りが禁止されていた臨時制限区域の中の調査を行っています。
ただの洞窟ではない、長島の洞窟
名護市辺野古崎沖に位置する長島には洞窟があります。その存在は、地元の人々には知られていました。
2014年に、藤田喜久氏(沖縄県立芸術大学)はその洞窟内で、”サンゴ礫が付着した鍾乳洞”を確認したのです。藤田氏は、海洋生物学の中でも特に甲殻類学を専門とする研究者ですが、洞窟生態系にも詳しく、2003年以来、沖縄各地において多数の洞窟および鍾乳洞の調査を行ってきましたが、このような微地形を確認したのは初めてだったそうです。
日本自然保護協会は、藤田氏から預かった写真などの情報を鍾乳洞などのカルスト地形の専門家である浦田健作氏(九州大学/日本洞窟学会元会長)に提供したところ、「海岸の洞窟内に、海浜石灰質堆積物がセメントされたビーチロックが形成されていることは、比較的珍しく、またこのように石筍にサンゴ礫が付着して成長した鍾乳石は珍しく、日本での報告例はない。長島の洞窟で見られるものは現在も形成中の非常に新しいものであり、形成過程がはっきりわかる」と、より詳細な調査の必要性が指摘されました。
(ページ最後に他の写真も掲載しています)
調査の申請に、そもそも回答がもらえない
そこでこれらの情報をもとに、日本自然保護協会は、名護市東海岸エコツーリズム推進協議会、北限のジュゴン調査チーム・ザン、ヘリ基地いらない二見以北十区の会と連名で、2018年6月に長島の洞窟の現地調査と沖縄県の天然記念物指定を陳情しました。
長島の洞窟の現地調査および天然記念物指定を求める陳情書(オフィシャルProに移動します)
しかし、この海域では米軍普天間飛行場代替施設の建設が行われており、沖縄防衛局により長島への立ち入りが制限されていました。日本自然保護協会は6回にわたって、洞窟の専門家による調査のための上陸を沖縄防衛局に申請してきましたが、回答がない状態が続いていました。
やってきた貴重なチャンス
しかし、この夏の公有水面埋立承認撤回に伴う工事の停止を受け、立ち入りが可能となったことにより、日本自然保護協会は辺野古海域において複数の分野の緊急調査を実施しました。
長島の洞窟の調査については、9月8日と12日の2日間に2名の専門家の助力を得て実施。サンゴ礁地理学・地形学を専門とする中井達郎氏(国士舘大学)には洞窟内を観察して地形や堆積物の状況を記録していただきました。
また前出の藤田喜久氏(沖縄県立芸術大学)には、同島の甲殻類相調査の際に、洞窟の簡易な測量を行い、その平面的形状と断面的形状の概要を明らかにしていただきました。これらの調査の結果、この洞窟には学術的な価値が高いことが改めて認められました(中井・藤田、2018)。
これらの調査や視察の様子に関する報道は以下の通りです。
- 辺野古に希少鍾乳石 環境団体 長島洞窟「国内で唯一」(2018年9月20日付 琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/photo/entry-805701.html - 工事停止中に長島洞窟調査を(2018年9月20日放送 琉球朝日放送)
http://www.qab.co.jp/news/20180920106688.html
また日本自然保護協会は、長島の現地調査を求める要望書を沖縄県に提出しました。
長島の洞窟の現地調査を求める要望書を提出しました(オフィシャルProに移動します)
20180919_(報告書)長島洞窟群の緊急調査結果とその学術的重要性について(191KB)
20180919_長島の洞窟の現地調査を求める要望書(223KB)
20180919_長島洞窟(断面図)(586KB)
20180919_長島洞窟(平面図)(2.96MB)
20180919_長島洞窟報告書(写真プレート)(913KB)
国会議員も関心を寄せています
9月24日と26日には国政野党超党派による沖縄等米軍基地問題議員懇談会に所属する議員が数名、辺野古を訪問しました。視察後に東京で行われた同懇談会で、議員から調査を求められた玉城デニー沖縄県知事は、長島の洞窟群にある鍾乳石について調査する考えを示しました。
- 玉城デニー知事、辺野古沖の鍾乳石調査へ 制限域の破棄求める意向(2018年10月13日付 沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/329255
洞窟の専門家により長島の洞窟の調査が行われ、工事の影響が及ばないうちに、科学的な価値が明らかになることを願っています。