2018.08.31(2019.07.08 更新)
環境アセスメントで守りきれないイヌワシ繁殖地
解説
専門度:
テーマ:生息環境創出
フィールド:森林
再生可能エネルギーの主力電源化と課題
今年7月3日、政府は2030年度に目指す電源構成を明記した「第五次エネルギー基本計画」を閣議決定しました。このパブリックコメントでは多くの脱原発の意見があったものの、電力量に占める原子力発電の割合を20~22%(おおよそ30基の運転。現在は8基の稼働)、再生可能エネルギーは22~24%にするとし、再生可能エネルギーの主力電源化が明記されました。
再生可能エネルギーには、良いものも困るものもあり、施設がつくられる場所が適切でなければ地域の自然性を将来的に失わせることもあります。風力発電はその最たるものと思われます。表1をご覧ください。イヌワシに関係し、かつ環境アセスメントの最終段階にある風力発電計画5件が、岩手県北上山地周辺に集中しています。
▲表1. イヌワシの繁殖・生息に危険を及ぼす可能性があると考えられる風力発電計画の中で、環境影響評価手続きが終わり、事業者の最終的な報告書が出される段階にあるもの。
この地域は、絶滅の恐れがあるニホンイヌワシの繁殖の中心地です。ほかの府県同様、繁殖成功率が落ちており、繁殖個体や若鳥が風車と衝突して死んでしまうと、イヌワシが地域から消える引き金となるでしょう。どの計画もイヌワシの繁殖地の中にあり、まさに風力発電の在り方が問われています。
NACS-Jは今後、日本イヌワシ研究会(東京)の観察記録をまとめた資料を提供いただくなどして、環境影響評価手続きでの計画変更要望や留意事項が事業者によって正しく反映されているかを点検し、不足の点があれば、事業の進捗にかかわらず事業者や風力発電業界団体に改善を求める準備を進めています。
※事業計画それぞれに対し、環境大臣から付けられた意見内容は、環境省のアセスメント支援ネットで閲覧できます。
http://www.env.go.jp/policy/assess/3-1procedure/
担当者から一言
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