2018.08.29(2020.04.27 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「この草で染めたら何色になる?」
観察ノウハウ
専門度:
テーマ:環境教育
フィールド:森林公園野原
<会報『自然保護』No.565より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
日本では昔から、植物の枝や葉、樹皮、根を煮出して、糸や布を染め、色を楽しむとともに、抗菌や防虫効果を活用してきました。
植物の色と伝統文化を観察に取り入れてみてはいかがでしょうか。
猪狩啓子(高崎市染料植物園)
植物に秘められた色
色の名前の中には、植物の名前がそのまま色名になっているものがあります。例えば「桜色」といったら、何が思い浮かぶでしょう。すぐに花の色が浮かびませんか。では、「茜色」は? 夕焼けのような赤い色、オレンジがかった赤い色。でもアカネには、茎や葉のどこにも赤みがかったところはありません。どこにその色が隠れているかというと、根なのです。名前の由来も赤い根からきているといわれています。この根で染めた色が茜色です。
ほかにも、「紫色」「支子色」「黄蘗色」など。どの植物も、思い浮かぶ色は、植物の外見からは見つけられません。紫色は、ムラサキの根、支子色はクチナシの実、黄蘗色はキハダの内樹皮、といろんな所に色を秘めているのです。
今、私たちは、カラフルな衣服で着飾っていますが、その色はほぼ化学染料で染められたものです。でも、明治時代に入るまでは、衣服を染めてきたのは植物です。鮮やかであったろう平安時代の十二単衣も、草や木から染めた色でした。染めるのも布だけでなく、紙も染めました。そして色を楽しむだけでなく染めることで浸透する薬効を活かしていました。紙に書かれた貴重な資料を長く残すために、生まれた赤子を無事に育てるために、大切な着物を虫から守るためにと。
自分で染めるのは、思いのほか簡単です。身近な植物を使って、庭で剪定した枝葉や、公園で剪定した枝葉をいただいたりして、危険な薬品も使わないので台所でもできちゃいます。ぜひ自分で染めて、身に付け楽しんでください。もっと植物と仲良くなれますよ。
クイズの答え:A(Bはアイの生葉染め)
おすすめ書籍
この記事は、「自然観察」で植物を観る際の視点に、植物からさまざまな美しい色が出せること、昔から植物が染色に利用されてきたことを加えていただこうとご紹介しました。
今回、具体的な草木染めのやり方、染料を繊維に定着させ色を落ちにくくする媒染という工程についての詳しい説明はご紹介できませんでした。
高崎市染料植物園では、アルミ媒染では、茄子の色つけにも使われている焼き明礬、鉄媒染では、酢と錆びた釘で自分でつくるおはぐろを媒染剤として使っているそうです。
猪狩さんからおすすめの書籍を伺いましたので、実際に草木染めをやってみたい方は、参考にしてみてください。写真やイラストで草木染めの詳しいやり方が紹介されているほか、残った媒染液を絵具にして処理する方法なども掲載されています。
山崎和樹・著『Hobby Days はじめての草木染 麻を染める』美術出版社・発行
山崎和樹・編 川上和生・絵『つくってあそぼう18 草木染の絵本』農山漁村文化協会・発行