2018.06.06(2018.06.06 更新)
西表島で22年ぶりの自然観察指導員講習会を開催しました!
イベント報告自然観察指導員
専門度:
テーマ:環境教育
フィールド:西表島
西表島は、日本政府が世界遺産への登録を目指しているものの、急増すると思われる観光客の受け入れ体制づくりがほとんどできていません。そこで、島内に自然の守り手を増やすため、22年ぶりとなる自然観察指導員講習会を2018年4月22日~24日にかけて、西表島で開催しました。
今回の講習会では、通常のカリキュラムに加え、世界遺産に関する公開セミナーや地元集落の方をお招きした講話も行いました。講習会には、西表島在住のガイド業関係者が多く参加されたほか、伝統的なイノシシ猟を営む若手猟師さんや子育て中のお母さんなどにもご参加いただけました。
初日のプログラムは「世界遺産セミナー」と題し、一般の方がどなたでもご参加いただける公開セミナーを開催しました。
はじめに環境省野生生物保護センターの方より西表島の世界遺産推薦地としての価値や登録にむけてのスケジュールをご紹介いただき、続いて世界遺産の専門家でもあるNACS-J代表理事の吉田正人氏を講師とした講演を行いました。
基調講演では、世界遺産制度の歴史や登録要件、世界各国の世界遺産に登録された場所で生じている地域の変化、遺産を守るための地元地域の取り組みに関する様々な事例の紹介がなされました。
特に印象深かった講演内容は、ユネスコの掲げる世界遺産は本来「自然」と「文化」を一体のものとして価値を評価し保存していくことが重要であるものの、これまで世界自然遺産に登録された地域では「文化」の保存への意識が不十分であったこと、様々な伝統が息づく西表島だからこそ「生物文化多様性」を伝え守っていける人材を育てていくことが大切だ、というメッセージでした。
基調講演に続いて、西表島エコツーリズム協会の事務局長をつとめる徳岡春美さんより、西表島で急増するガイド業の実態や、現在進んでいる観光利用ルール作りの状況などの紹介がありました。
3日間を通じた野外実習では、原生的な自然環境のある場所でなくとも、また十分な知識が無くてとも、身近な自然の中でこそ自然観察活動が実施できることを体験型の学習を通じて一人一人が実践的に学びました。また、ジオパークのガイド養成にも関わられ、今回の講習会でもう一人の講師を務められた一寸木肇氏からは、世界遺産地域における地域の子どもへの教育の重要性から、子どもにとっての自然体験・自然観察の大切さやその上での指導員の役割を講義いただきました。
西表島の伝統や芸能に精通し、エコツーリズム協会の会長も務められていた石垣金星氏からも特別講話をいただきました。
ほとんどの受講者が本州から移り住んだ方であるため、それぞれの集落の歴史や古い伝承・しきたりなど、口承でしか伝えられていない多くの事を伺えたことは非常に貴重な機会となりました。
大部分の受講者は普段ガイド業に従事している方々でしたが、3日間におよぶ講習会を終え、9割以上の方から「自然の見方が変わった」という感想をいただきました。「大げさでなく100回くらい感動しました」「人生において出会えてよかったと感動した、大きな喜びがまた一つ増えました」といった声もいただきました。
今回指導員となった一人ひとりが、地域の自然を守り、自然観察を通じて西表の自然の価値と保全の大切さを伝えてくれる担い手となってくれることを期待しています。
なおこの度の講習会は、全国の123名のご個人の方からの寄付をもとに開催できたものです。ここに心からの感謝を申し上げます。
自然観察指導員講習会について、詳しくは以下URLよりご覧ください