2017.12.31(2019.07.08 更新)
赤谷の森で、2年連続でイヌワシの幼鳥が巣立ちました!
▲2017年に巣立ったイヌワシの幼鳥(撮影:上田大志)
2016年に続き、17年も群馬県赤谷の森のイヌワシペアが子育てに成功しました!今回は、この大きな成果の背景にある赤谷プロジェクトの猛禽類モニタリングワーキンググループ(以下、猛禽類WG)をご紹介。猛禽類WGは、赤谷の森のイヌワシとクマタカのモニタリング調査を行い、生物多様性保全につながる森林管理の提案を続けています。
(リポーター・NACS-J出島誠一)
赤谷プロジェクト猛禽類WG委員 横山隆一
NACS-J参事。長年、赤谷の森のイヌワシ・クマタカのモニタリング調査を続けるとともに、林野庁関東森林管理局・希少種委員会の委員、日本イヌワシ研究会・副会長なども務めている。
2016年11月19日、赤谷プロジェクト猛禽類WGの現地会合を行い、イヌワシが狩りをする環境をつくりだすため、15年にスギ植林を伐採した2haの試験地を視察してきました。
伐採から2年経過した試験地は、人の背丈ほどのクマイチゴが繁茂している場所もあれば、ミズナラやブナ、ホオノキなどの稚樹が1m程度に生育している場所もあります。イヌワシの主な獲物であるノウサギにとって好ましい植生や、16年11月4日に観察されたイヌワシの狩り行動の詳細について、みんなで確認しました。
イヌワシの狩場創出の取り組みの先行事例は多くありません。90年代の生息環境を知る横山をはじめとする専門家と、プロジェクト関係者で十分な意見交換と情報共有をすることが、このような新しい取り組みを進めるためにはとても重要です。
活動のルーツは80年代
日本自然保護協会が進めるイヌワシの生息地の保護活動は、横山が80年代に進めた、秋田県田沢湖でのリゾート開発から、イヌワシが繁殖を続けられる自然を守ろうとした自然保護活動にルーツがあります。この活動は、大規模開発からイヌワシなどの大型猛禽類のすむ森林環境を守るモデルとして全国の自然保護に貢献しました。
赤谷の森で91年から調査が始まったのも、当時計画されたダムとスキー場開発計画に対する自然保護運動の一環でした。03年の赤谷プロジェクト発足以降は、豊かな森林生態系の指標種として、イヌワシやクマタカのモニタリング調査を続け、研究を蓄積してきました。
15年にイヌワシの狩場創出のため第1次試験地で伐採を行い、16年には、赤谷のイヌワシペアが7年ぶりに子育てに成功。
なんと17年にも成功し、10年ぶりに2年連続でイヌワシが巣立つといううれしいニュースが続いています※。
クマタカについても、クマタカを指標とする森林管理の提案を具体的に行っています。これらの成果は、イヌワシの保護活動や、赤谷の森のイヌワシの調査を30年近く続けてきた蓄積が基盤にあり、それが大きな強みとなっていることを改めて感じています。
2016年7月に猛禽類WGが発表した『クマタカを指標とした生物多様性保全に資する森林管理の提案』をまとめた冊子。長年のモニタリング調査に基づき、クマタカの生息する森林の保全と効率的な木材生産を両立する具体的な森林管理を提案し、林野庁からも高い評価を受けた。
リポーターから一言 出島誠一
2017年もイヌワシが元気に巣立ってうれしいかぎり!赤谷プロジェクトは発足から14年目。活動の継続と成果を少しずつ積み上げていくことの重要性を感じます。