2017.12.18(2017.12.18 更新)
九州自然協議会in佐賀 に参加&荒瀬ダム撤去現場、石木ダム建設現場を視察
報告
専門度:
荒瀬ダム撤去現場
テーマ:生息環境保全外来種環境教育
フィールド:川
保護室の辻村です。
12月9日~10日に佐賀県で開催された九州自然協議会に参加してきました。九州各地から自然観察指導員連絡会の方々が参加され、今回のテーマは“外来種”ということで、佐賀平野のクリークなど現地視察もありました。
座学では上赤さんから佐賀県内の植物外来種について、佐賀県立宇宙科学館の伊藤さんが魚類の外来種について講演されました。
私からは、そもそも外来種とは何かをスタートに、対策の基本、「入れない」「捨てない」「広げない」のそれぞれの難しさや、命に差をつけてしまう現状について小笠原の事例を紹介しながらお話しさせていただきました。
外来種問題は根深い問題ですので、そう簡単には答えが出せない問題もたくさんあります。良かれと思って行ったことが逆に生態系への脅威になる(これを私は善意の暴力といっています)ことも多々あります。しかし、できることも多々あると思います。私たちの暮らし方を見つめなおし、大地に根差した暮らしをすることで不必要な物質移動を減らすことはできると思います。私たちは発展した経済社会の中で、多くの利便性を享受しています。一度立ち止まって、未来の社会のありようを考えることも重要ではないでしょうか。私たちは、できるだけ日本の国土でまかなえる範囲の生活で幸せを感じる社会について今後も考えていきたいと思います。
さて、今回の九州出張は折角の機会なので、いくつか気になっていた現場も見に行くことにしました。
最初に訪れたのは、荒瀬ダムの撤去現場です。今では河岸の基礎部分以外完全に撤去されています。工事による浚渫も行われていますが、水が正常に流れるようになると、瀬や淵がよみがえってくるのがよくわかりました。川というものは流れてこその場所なのです。
今回案内していただいた、NACS-J会員のつる祥子さんに撤去前の写真を見せていただきました。
上流には撤去されていないダムがあります。今、土砂の堆積を減らすために水が抜かれているので、撤去された荒瀬ダムの川の様子と明らかな違いがわかると思います。
川をよみがえらせるのに何が最も有効なのか、目の前の景観が教えてくれています。
その一方で、これからダムを作ろうとしている場所があります。その、長崎県石木ダム建設予定地を見てきました。土地の強制収用が始まり、付け替え道路の建設が行われています。地元の方々は40年以上も反対運動を継続され、この日も抗議行動が行われていました。
ここはかつての日本に普通にあった里の風景をよく残している場所です。そこでは普通に人々が暮らし、その暮らしは中世から続いています。集落の奥にはとてもいい水場もあり、人と自然とが調和した暮らしがあります。私たちが経済成長との引き換えに、各地で失ってきたものがここには残されているのです。ここにダムが建設される。ダムサイト予定地には住民の方々の小屋がたっていました。
そもそも、40年以上なかったものが、今必要なのでしょうか。この計画が作られたときに生まれた子供は、中年です。当時、計画を考えた中年の方々はもう老年です。それくらいの年月がたっています。これからを生きる人たちが計画を見直すことが必要ではないでしょうか。いったいいつまで同じことを、同じ痛みを繰り返せばいいのでしょうか。