2017.11.01(2017.11.02 更新)
台風22号後の奄美大島の海は・・・
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専門度:
テーマ:世界遺産伝統文化防潮堤・護岸海の保全
フィールド:海
保護室の安部です。
奄美大島の嘉徳海岸は、琉球列島でも数少なくなった、人工物のない自然のままの砂浜です。
ここに護岸をつくる計画があり、日本自然保護協会では見直しを求めてきました。(※嘉徳海岸と護岸工事計画についての詳細は こちら をご覧ください)
この夏、有識者の検討委員会が設けられて議論が始まり、行方を注目しています。日本自然保護協会としても、専門家による独自調査や島内の会員や地域の方に呼び掛けて市民参加型の砂浜調査を行おうと準備をしていたのですが、季節外れの台風22号が直撃。台風より一足先に島に到着していたので予定変更を利用して、地元の方との調整や調べものに回りました。
はっとするほど美しい自然とぎょっとする自然破壊が隣り合わせにある奄美大島です。
★10月28日_奄美大島
ジュラシックビーチ・嘉徳(奄美大島)に砂浜生物調査をする予定だったのですが、台風22号の影響により、調査は延期。調査に伴う後片付け・再調整などのために来ています。夕方から急に風雨が強くなりました。
さきほどは外に面する雨戸が風で勝手に動いていました。
★10月29日 台風一過の奄美大島、手広海岸
★10月30日_住用町市
台風22号の影響の残る奄美大島を南下しました。住用町市(いち)では雨により採石場から運ばれた赤土で海が真っ赤に染まっています。採石場内の沈降池の水がこの色で、ここまま海に流れ出てきます。
ここは世界自然遺産の推薦区域を取り囲むように設置された緩衝地帯(バッファーゾーン)の外なので何をしようとも違法ではありませんが、世界自然遺産推薦区域の至近距離にあります。このような自然破壊行為が許されてよいのでしょうか。海と陸の連続性が美しい奄美大島。島全体、沿岸一帯が世界自然遺産に登録されるべきです。
集落の入口の看板には「世界自然遺産が聞いてあきれる」との言葉が。
★10月30日 嘉徳海岸(かとくかいがん)
台風22号で砂浜が侵食されているのではないかと心配しながら奄美大島の南に位置する嘉徳海岸に行ってみたところ、砂は台風で持って行かれるどころか戻ってきていました。巨大な護岸を建てる必要はありません。
ただし別の脅威も迫っています。島の真ん中を通る58号線から嘉徳海岸に下りる道の途中にできつつある自衛隊駐屯地。奄美大島の海と陸の連続性を断ち切るものであり、むき出しの赤土は、希少なリュウキュウアユのすむ嘉徳川に流れ込む恐れがあります。
★10月31日 瀬戸内町立図書館
奄美大島嘉徳のことを調べに図書館へ行きました。奄美や瀬戸内町の自然と文化がコンパクトにわかる展示が設置されていました。
嘉徳の遺跡から出てきた土器も並べられています。奄美の自然、海や漁のこと、農業のこと、暮らしのこと、妖怪のことなどが展示されています。いずれも奄美の豊かな自然があってこそ成り立つもの。これ以上の自然破壊は止めて欲しいです。
★10月31日 大島海峡の海の視察
アマミホシゾラフグがミステリーサークルを作ることで知られている大島海峡。
今日はビーチエントリーの素潜りで少しだけ嘉鉄湾(かてつ)の海の様子をのぞいてみました。ダイビングポイントまでは行けませんでしたが、湾内の様子を見ることができました。ユビエダハマサンゴ群集をメインに、塊状ハマサンゴ群集、ミドリイシ、キクメイシ、被覆状のサンゴなど多様なサンゴが生息していました。
今月にこの地域にも来た台風21号22号のおかけで、かなり水温は下がりましたが、今もなお白化しているサンゴや白化の結果死滅してしまったサンゴも見られ、この夏の条件(水温等)がとても厳しかったことを物語っています。
気候変動に対し、すぐに効果がでることはありませんが、せめて今ある健全なサンゴ礁や砂浜を埋め立てたり護岸を作たりするのは止めて欲しいです。海はもう限界です。今、白化しているサンゴに共生していた褐虫藻が戻り、また元気になりますように。
●https://www.spf.org/…/information/newsletter/backnumber/201…
●http://www.setouchi-bunkaisan.com/nature/marine/55