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2017.11.01(2017.10.30 更新)

“やんばるの森”を保護地域に

報告

テーマ:世界遺産森林保全

フィールド:

やんばる「森林生態系保護地域」づくり

停滞していた返還地の保護地域化の議論

沖縄島北部の米軍から日本(防衛省)に返還される北部訓練場。その北部訓練場を、防衛省から国有林(林野庁)に戻された後に保護地域化するための検討状況について2008年の会報506号で経過報告しました。それから既に9年が経ってしまいました。この間に、返還地の境界の確定の問題や辺野古への基地の新設移転の問題、未返還地に新たな軍事機材の訓練施設を増設する問題などがあり、保護地域化の話は停滞し続け、森林生態系保護地域の設定は未だ行われていません。

その中で、北部訓練場の約半分が2016年に米軍から防衛省に戻され、2017年12月にようやく国有林に戻ることになり、森林生態系保護地域の設定のための検討が再開されました。森林生態系保護地域の設定は2018 年の4月1日とのことで、どこまでの範囲を保護地域にできるかの議論が続いています(図)。

▲森林生態系保護地域の設定範囲を検討中の国有林とほかの指定範 囲のおおよその区域を現した概念図

 

日本自然保護協会はこの30年間、この自然を守るしくみづくりに努めてきました。

「やんばる(山原)」は沖縄島北部の南北に山々が連なる地域で、スダジイやオキナワウラジロガシなどに代表される亜熱帯照葉樹の森があります。複雑な地形の中には小規模ながら多様な渓流環境があり、その環境は、ケナガネズミのような哺乳類、ノグチゲラやヤンバルクイナのような鳥類、多くのカエルたち、ヤンバルテナガコガネなどの昆虫類の本当に限られた生息地になっています。固有種を含む動植物の種の多さと、太古からの何度もの激しい地殻変動によって、中国大陸や東南アジアなど別々の場所に種の起源がある生きものたちが、同じ島の中の特定の地域に生きているという、地球の中にまさにここにしかない不思議な場所です。

 

国立公園や世界遺産推薦地域に返還地が含まれていない

やはり長く停滞していた保護地域化の取り組みのひとつ、国立公園化は2016年9月にようやく指定されました。ユネスコの世界自然遺産の候補範囲はこの国立公園の指定地が基本になり、奄美大島や徳之島、沖縄の西表島と共に自然遺産に申請されています。米軍から返還される場所は調整がつかず組み込まれませんでした。主稜線西側の民有地域のみが、国立公園や世界遺産候補地となり、残念ながら保護地域としてはいびつな形となっています。今回、返還地の国有林に森林生態系保護地域を確実につくることは、まさに核心部を守るしくみの確立とやんばるの保護地域全体の完成度を上げるために重要な仕事だと思っています。ぜひ経過にご注目ください。今回未返還の地域も、本来は返還されるべき地域です。

 

 

担当者から一言

参事 横山隆一
やんばるの里からすっかり消えてしまった田んぼや池沼の復活のさせ方も大きな課題で、方策を日々考えています。

 

 

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