2017.10.05(2017.10.05 更新)
『JEAN海のプラごみ汚染問題解決にむけた連携ワークショップ』に参加しました
解説
専門度:
テーマ:海の保全
フィールド:海
保護室の安部です。NACS-J萩原と2人でJEANのワークショップに参加しています。
日本自然保護協会は、これまで「海洋保護区の拡充が必要」と提言してきました。
最近では海を取り巻く様々な課題の中でマイクロプラスチックを含めた海洋汚染の深刻さがわかってきて、実際に生物多様性への悪影響も出ています。
今後の活動に必要なことですので、今回のワークショップに参加することにしました。
まず茨城県神栖市浜崎海岸に出ました。
「しかたに自然案内」の鹿谷麻夕さんに『沖縄方式』を教えていただきました。
沖縄方式とは
沖縄県海岸漂着物等地域対策推進事業において検討したマイクロプラスチックの簡易的な調査方法のことです。
100円ショップでも入手できる幅25cmのちりとりを用います。これは方形枠としても使え、サンプリングにも使えます。採ったサンプルをバケツの水に入れると、マイクロプラスチックが水面に浮いてきます。
次に小島さんの指導でICC(国際海岸クリーンアップ)方式でごみを集め、簡単に種類分けをしました。この地域は漁網や漁具など漁業関係のゴミが多く、また農業用・家庭用の不法投棄なども多いとのこと。砂の中からソファが出てきたこともあったそうです。
講義室では、あらかじめJEANが湘南、沖縄、神栖、五島などで採取してきた砂に混ざったごみを各テーブルにて観察しました。
神栖のごみはきれいに人工物と自然物を分けることができましたが、沖縄は砂もごみも粒子がこまないので、プラスチックが混ざっていても目視で見分けるのは難しいです。有孔虫が作る星砂も混ざっています。
▲沖縄の細かな砂。ここからプラスチックごみを見つけるのは大変です…
▲NACS-J萩原も苦戦しています。
▲ハイテク機材を用いて、見分けがつかないものは画面にアップして解説していただきました。
化学肥料が混ざっているケースもありました。
人間が目視で見分けられないものは野生生物も見分けられません。動物の胃から多くのプラスチックが見つかっています。
JEAN金子さんより「まちと川のごみ事情」のお話も聞きました。
- 農業系などの産業系のごみが川には多い
- 土地利用者の管理意識の欠如から川への流入は絶えない。(シート類や肥料袋のプラスチックごみの産卵)
- 川にもマイクロプラスチックが含まれている。
- 石垣島の宮良川でもマイクロプラスチックが発見されているということは、広い範囲で存在するということか?
- 川に出るごみの量・内容を愛知県と山形県で調査した。
- 街でごみの分量を量るのは難しいが、どの川に流れ出るごみが多いかを見つければ、重点的に対策を取るなどのことができる。
- なぜか納豆の容器が多かったり、何らかの傾向がある。
- 海とともに川のごみも対策が必要。
- 日本の行政は縦割りになっており、海と川は管轄が違う。
- 行政は理由がないと物事を実行できない。世論を高めていくことが必要。
日本プラスチック工業連盟の岸村さんより「プラスチック業界の国内外の動向」についても伺い、海外の事例や日本での取り組みについてのご紹介いただきました。
業界が変わらなければいけないという面ももちろんあるものの、世論が高まらないと実行できないこともあります。
『JAMSTECが深海のゴミのデータベースを作るほどの状況である。汚染されていない海はない』という鹿谷さんの言葉が印象に残るワークショップでした。
どうか皆さんも、マイクロプラスチックの問題に関心をお持ちください。
▲JEANの展示物の数々も衝撃を受けるものです。