2017.08.31(2019.07.08 更新)
日本唯一・オサガメが上陸した砂浜を守る
解説
専門度:
嘉徳海岸の砂浜は、嘉徳川が山から運んだ砂でつくられているので灰色がかった色。サンゴが発達する琉球列島には川が運んだ砂だけでできた砂浜は7カ所しかなく、護岸などのない自然の砂浜はここだけ。
テーマ:生息環境保全防潮堤・護岸海の保全
奄美諸島を含む琉球列島の多くの海岸には護岸や漁港などができてしまい、自然のまま残っている砂浜がとても少なくなっています。そのような中で鹿児島県奄美大島の嘉徳海岸にはまったく手付かずの自然のままの海辺が残っています。
ここには世界的に絶滅が危惧されているアカウミガメとアオウミガメが初夏から夏にかけて上陸し産卵します。また2002年にはウミガメの一種オサガメが産卵に上がったことが記録されています。オサガメの上陸・産卵は、日本でもここだけで、オサガメの世界的な最北端の産卵場所として記録されています。
オサガメは2億年前の恐竜の時代からその形を変えていない極めて古代的なウミガメで、現在世界ではもっとも希少なウミガメとして国際的に保護されていますが、減少の一途をたどっている種であり、厳重な保護が求められています。
また嘉徳海岸に流れ込む嘉徳川にはリュウキュウアユがすんでいます。リュウキュウアユはかつては沖縄本島にも生息していたのですが、そちらでは絶滅してしまいました。奄美大島だけに残る貴重な魚です。
この美しい海岸に全長530m、高さ6.5mのコンクリートの直立護岸の建設計画が浮上しています。この場所では数年前から砂浜が侵食され、高潮などの際に波が集落近くまで来ることがありました。地元住民の方々から、人々の家やお墓が波でさらわれたら困るので護岸をつくってほしいという要望が出されましたが、この豊かな自然を失うのは惜しい、コンクリートの大きな護岸ができてしまったらそこはもう嘉徳ではない、と保全を訴える声も地元から出てきました。NACS-Jとしても亜熱帯に残る貴重な自然海岸が自然のまま残るよう、鹿児島県に対して要望しています。
6月11日には、この場所の重要性を明らかにするため、緊急の砂浜生物調査を「海の生き物を守る会」との共催、「自然と文化を守る奄美会議」の後援で実施しました。
その結果、わずか1時間ほどの調査にもかかわらず、合計70種もの生きものが記録されました。そのうち60種は貝類で、絶滅危惧I類のナガタママキや、絶滅危惧II類のホシヤマナミノコザラ、トウカイタママキ、準絶滅危惧のタイワンキサゴ、ナミノコガイ、キュウシュウナミノコなど環境省レッドリスト掲載種が6種含まれていることが分かりました。今後詳細な調査が必要です。
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