2017.07.25(2017.07.26 更新)
北陸新幹線トンネル工事で中池見湿地のマンガン採掘坑の生き物はどうなる?
調査報告
専門度:
テーマ:生息環境保全環境アセスメント
フィールド:湿地
生物多様性保全室の福田真由子です。
北陸新幹線のトンネルが貫通する中池見湿地にあるマンガン採掘坑の中で生きものが見つかった、と聞いて、7月22日に自然観察指導員で滋賀大学4年生の藤野勇馬さんに案内してもらい、地元市民団体「ウェットランド中池見」のメンバーらとともに山に登りました。
※中池見湿地に関するこれまでの活動はこちら(アーカイブサイトに移動します)をご覧ください。
ラムサール条約湿地・中池見湿地(福井県敦賀市)は2012年に北陸新幹線の開発計画が発表され、日本自然保護協会・市民団体の保護活動によって環境への影響が大きいルートは避けられたものの、現状のルートでも条約湿地内にあり、湿地の水源となる山をトンネルで貫通する計画となっています。
一般にはほとんど知られていないマンガン採掘坑を見るため、私達はトンネル計画がある深山(みやま)の谷筋の水の流れを伝って上流へ歩きました。林床にシダ植物が生えるスギ林を通り、枝につまずき、急峻な斜面を四つん這いになって登ったところで「ここです!」と藤野さんの声。50×20㎝ほどの穴、マンガン採掘坑を発見。
「戦時中の昭和18年に、国の資源獲得のためにマンガンが掘られたものよ。トロッコで外まで運んでいたと古老から聞いています。」とウェットランド中池見の理事長で自然観察指導員の笹木智恵子さんが言いました。
私達がたどりついた坑道は風穴になっていて、ひんやりした風が吹いてきました。もう一つの坑道は、入口は足から1人やっと入れる程度ですが、中は10mほどの空間があり、水が溜まっているそうです(私は勇気がなく入れず)。
藤野さんが調査した6つの坑道には、キクガシラコウモリや地下水性の甲殻類や貝類なども見つかっています。工事によって水位が減少することで、マンガン採掘坑の中の生き物も、林内の植生も大分変わるかもしれません。
中池見湿地には、歴史や自然を熟知し、変化も見てきているこうした市民の方々がいます。
しかし現在行われている、新幹線の建設工事による環境配慮を話し合う専門家会議は非公開となっていて、市民の声を届ける機会がありません。新幹線の建設工事が今年度中にはじまってしまうことが避けられない今、中池見湿地の環境を守るためには、すべてのステークホルダーが参加し、対策を話し合う場が必要です。この問題の解決のために日本自然保護協会では引き続き、関係者と協力して取り組んできますので、応援よろしくお願いします。