2017.07.14(2019.07.08 更新)
恐竜時代の生き残り・オサガメが産卵する奄美の海岸調査を実施
調査報告
専門度:
調査で採集した生きものたち
テーマ:防潮堤・護岸自然環境調査
フィールド:海辺
日本で唯一オサガメの上陸・産卵が確認されている奄美大島の嘉徳海岸(鹿児島県大島郡瀬戸内町)に突如コンクリート堤防の建設計画が浮上・進行しています。
6月11日、この場所の重要性を明らかにするための緊急の砂浜生物調査を行いました。
この調査は、海の生き物を守る会との共催、自然と文化を守る奄美会議の後援で実施しました。参加者16 名、スタッフ 3名、協力研究者2名とともに、砂浜の様子や、生きものの観察を行いました。
その結果、合計70種もの生き物が記録されました。
そのうち60種は貝類で、ナガタママキ(絶滅危惧I類)、ホシヤマナミノコザラ、トウカイタママキ(絶滅危惧II類)、タイワンキサゴ、ナミノコガイ、キュウシュウナミノコ(準絶滅危惧)の6種はレッドデータ種であることがわかりました。ナミノコガイは,古い殻しか確認されず現在は生息していないと思われるため、今後詳細なる調査が必要です。
また海浜植物帯にはアダンの海岸林が形成されており、その下部および前面にはグンバイヒルガオ、ハマゴウ、コマツヨイグサ、クロイワザサ、ハマアカザ、ハマユウ、シロバナセンダングサ、キダチハマグルマが生育していることが確認されました。
回復した砂の斜面でグンバイヒルガオが定着していること、砂の固定や流出を食い止める機能を果たしつつあることが特徴的で、砂の安定に寄与していることが示唆されました。
さらには、今年のものではありませんが、ウミガメの卵の殻も確認されました。
環境省の調査により、この砂浜には毎年のようにウミガメが上陸・産卵していることが分かっており、今年も6月上旬に上陸した足跡があることがジョンマーク高木さんにより確認されています。
2002年にはオサガメの上陸・産卵が確認されています。
オサガメは2億年前の恐竜の時代からその形を変えていない極めて古代的なウミガメで、現在世界ではもっとも希少なウミガメとして国際的に保護されていますが、減少の一途をたどっている種であり、厳重な保護が求められています。
オサガメの上陸・産卵が確認されているのは、日本でもここだけ。オサガメの最北端の産卵場所として記録されています。
このような生物多様性豊かな貴重な場所に、全長530m、高さ6.5mのコンクリートの直立護岸の建設計画が浮上しています。この場所では数年前より砂浜が侵食され、波が集落近くまで来るということがありました。そのため、人々の家やお墓が波でさらわれたら困るので護岸を作って欲しいという要望が地元住民の一部から出されたためです。しかしながら、この豊かな自然を失うのは惜しい、コンクリートの大きな護岸ができてしまったらそこはもう嘉徳ではない、と保全を訴える声も出てきました。
日本自然保護協会としても亜熱帯に残る最後の自然海岸が自然のまま残るよう要望しています。(https://www.nacsj.or.jp/archive/2017/07/8181/)
I
海の生き物を守る会、自然と文化を守る奄美会議、貝類多様性研究所、リュウキュウアユ研究会から、この調査の結果を踏まえて、奄美大島で唯一残る集落の前にコンクリート護岸の無い自然海岸である嘉徳海岸に、鹿児島県が計画している護岸建設工事をできる限り環境に影響を及ぼさないように再検討することを要求し、鹿児島県・瀬戸内町・嘉徳区長あてに要望書を提出しています。
要望書と添付資料は以下からダウンロードできます:
・要望書(鹿児島県知事宛)
・添付資料1 嘉徳浜とリュウキュウアユ
・添付資料2 嘉徳海岸の貝類相
・添付資料3 嘉徳(貝類リスト)(xlsx)
・添付資料4 嘉徳海岸調査報告(2017年6月)
・添付資料5 奄美大島の海岸侵食 視察(2015年5月12月) 報告