2017.02.27(2019.07.08 更新)
外来種問題を考えるシンポジウム~島嶼の生態系を守るために~ を開催しました。
イベント報告
専門度:
テーマ:外来種生息環境保全
フィールド:辺野古・大浦湾東京都
いま、世界的に外来種の脅威が認識されています。2016年9月の国際自然保護連合の世界自然保護会議では、外来種問題に関係する様々な措置を求める「ホノルルチャレンジ」が採択さるなど、とても注目度が高い自然保護問題でもあります。
そのような中、日本自然保護協会(NACS-J)と、世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は共同開催で、外来種問題を考えるシンポジウム~島嶼の生態系を守るために~ を開催しました。今回のシンポジウムでは、基調講演に五箇公一さん(国立環境研究所)、話題提供として佐々木 健志さん(琉球大学農学部博物館)、権田雅之さん(WWFジャパン)、 安部真理子(NACS-J)、パネルディスカッションコーディネーターとして草刈秀紀さん(WWFジャパン)をお招きして実施しました。
基調講演のなかで五箇さんからは、外来種により世界の生物多様性が損なわれてしまっている現状が事例で紹介されました。
五箇さんはダニの研究者でもあることから、わかりやすい事例として、クワガタムシにつくダニについて紹介されました。クワガタムシは種類ごとに異なったダニが寄生しており、種の分化が進むと同時に寄生するダニの種も分化していることなどの紹介されました。1種1種の種の存在が、どれほど生物多様性に大切な存在なのかを伝えると同時に、外国産のクワガタムシを輸入し野外に放つことは、それらの営みを壊すことになってしまうことなど、精度の高い調査データを用いて、具体的に例示してお話されました。
また、カエルツボカビ病や植物のクズなどの事例から、国内の在来種を外国に持ち出すこと(意図せざる場合も含め)の問題点などの解説もありました。
続いて、当会の安部からは、辺野古の埋め立に使う土が、沖縄本島以外から運ばれつつある現状の紹介がなされました。生物地理区分や気候帯の異なる場所からの土砂の搬入も予定されており、やんばるの森が世界遺産登録の機運も高まっているなか、外来種対策のあり方も問われていることを浮き彫りにしました。
次に、佐々木 健志さんからは、沖縄に持ち込まれた外来種の対策についてお話がありました。沖縄県内では、既に1200種類を超える外来種が定着していて、農作物や野生生物に影響を与えている様子をお伝えいただきました。沖縄島や奄美では、過去にハブの天敵としてマングースの導入が進められていましたが、生活行動が異なることから接点がなく、天敵としての役割が果たせないことなど、意図的な外来種の導入の問題点も指摘されました。また防除対策には、並々ではない苦労があることもお話されました。
権田雅之さんからは、南西諸島での外来種対策の様子が報告されました。特にアマミノクロウサギの保護のためのマングース対策が効果を上げていることなどを、具体的な事例をからめご紹介いただきました。
パネルディスカッションでは、会場から多くの質問が寄せられました。特に沖縄の外来種問題を心配する声も多く、数多くの質問がありました。特に島嶼(島々)では外来種侵入の「予防」が大事だと確認されその危険性が高いことの認識も共有されました。
質問の中で、コーディネーターの草刈さんからは、有効な対策にどう資源や人を集中させられるか、具体的な例を出しなが問題点の指摘もありました。
最後に、基調講演いただいた五箇公一さん、話題提供をしてくださった佐々木 志さん、権田雅之さん、安部真理子さん、草刈秀紀さん、シンポジウムにご参加くださった100名近くの皆さま、ありがとうございました!
当日は、侵略的外来種に関する愛知ターゲット9番達成に向けた政府の取り組みを促すツールキットをNGOで翻訳したものの概要版を配布させて頂きました。
ご興味のあるかたは、以下からダウンロードしてみてください。
外来種ツールキット_抜粋版.pdf
また、このシンポジウムの様子は、新聞報道もされました。
47NEWS
http://www.47news.jp/localnews/okinawa/2017/02/post_20170226111139.html
沖縄タイムス 2017年2月26日記事
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/85911