中国漁船による小笠原沖の宝石サンゴの盗掘が問題になっています。
調べられていない「宝石サンゴ」
日本は、世界的な宝石サンゴの主要生息地のひとつですが、深海に生息する生物であるため、宝石サンゴについては非常に限られたことしかわかっていません。
日本自然保護協会が辺野古のサンゴ礁で実施してきたような市民参加の調査で行ける場所ではないので、残念ながら日本自然保護協会も、宝石サンゴについては独自のデータはもってはいません。
サンゴと呼ばれる生物には、大きく分けて宝石サンゴと造礁サンゴがあります。同じサンゴではありますが、種も生態も大きく異なります。
造礁サンゴが、沖縄や熱帯の浅い海に育ちサンゴ礁を造るのに対し、宝石サンゴは光も届かず人の目に触れることのない深海に生息しているのです。
サンゴを守るルールがない、日本の海
宝石サンゴは成長が遅く、数センチに数十年かかるといわれています。無秩序な漁をすればすぐ枯渇する自然資源です。そのため、漁業資源の管理のため、日本での漁には地方自治体の許可が必要など厳しい規制が敷かれています。
一方、絶滅の危機にある動植物の保護に関する法律「種の保存法」や、野生動植物の国際取引に関する「ワシントン条約」の付属書には宝石サンゴはリストアップされておらず(2010年に提案されましたが日本は反対)、自然保護の法的根拠は現在のところありません。
ですので、今回の問題で浮き彫りになったことは、日本は、海洋国家にも係わらず、海の自然保護に関してとても遅れているということでなのです。
海や海洋生物に関するデータ、法律など、どれもとても貧弱です。
さらに、陸とは異なる独特の環境についての理解や教育、海と陸との連続性や関係性などについてはなおさらです。
海の生物多様性をくらしに活かす地域の伝統的な知恵も急速に失われようとしています。
海洋保護区の必要性
日本自然保護協会では、こうした背景から海洋保護区の拡充や、海岸法などの関連する法律の改善をこれまでも強く主張し働きかけを行ってきました。
今回のような問題が起きないようにするためにも、海洋国家として海の自然保護がきちんと進むよう、日本自然保護協会は今後も海の自然保護に取り組みます。