2012.07.11(2017.04.04 更新)
宮崎県の綾町と綾の照葉樹林プロジェクトエリアが、「綾ユネスコエコパーク」に登録されました!
専門度:
テーマ:ユネスコエコパーク
フィールド:里山原生林
2012年7月11日、宮崎県の綾町と「綾の照葉樹林プロジェク」トエリアが、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の国際調整理事会で、「綾ユネスコエコパーク」として正式に登録されました。
綾ユネスコエコパークは、1980年に登録された屋久島、大台ヶ原・大峰山、志賀高原、白山に次いで国内では32年ぶりの5例目となり、ユネスコエコパークという名称になって、初めての登録となりました。
■NACS-J 朱宮丈晴 のコメント:
綾町がユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に登録されたことについて、かつての電力会社の送電線開発問題からともに保護活動を行い、守ってきた自然を活かし持続可能な地域づくりを進める活動の中で、エコパークの登録を支援してきた日本自然保護協会にとっても、今回の登録を大変嬉しく感じています。
今回の登録は、次のようなポイントから自然保護の新たな可能性を切り開いたものとしても、世界的にも大変大きな意味を持ちます。
・綾町という「地域」が国際的な取り組みである保護地域の登録を、自ら主体的に行った最初の事例であること。
・これまで30年にわたり身近な自然を守ってきたことで、地域の持続可能な社会づくりに貢献できることを示したこと。
・多様な主体(行政、NGO、市民団体、市民)が協働し合意形成を図り、地域の理解を得ながらすすめた取り組みが成果となったこと。
また、地域の生物多様性保全を効果的に進めるためにも、
・これまでの日本の保護地域は奥山の貴重な自然を保護する目的で設定されたものがほとんどであったが、それを保護するためには周辺の地域を含めて保護地域として考える必要があり、MABのゾーニングを実際に適用したものとして日本ではじめてのエコパーク登録であること。
・日本の地域から生物圏保全地域が32年ぶりに新たに登録されたことで、新たな保護地域制度としてユネスコエコパークが活用できるようになったこと。
は、今後の環境保全策としての日本国内のユネスコエコパークの活用に大きなはずみをつけたものです。
これからも当会は、この綾の取り組みを先例として、持続可能な地域づくりの活動推進を強くアピールしていきます。
※「ユネスコエコパーク」とは、2010年に決まった「生物圏保存地域」の日本での呼称です。ユネスコのMAB計画は、自然資源の利用と保護に関する研究を行う政府間共同事業で、この計画に基づいて、生物圏保存地域を登録します。登録数は114カ国、580地域(平成23年7月現在)にのぼり、イエローストーン(米)、ガラパゴス諸島(エクアドル)などがあります。
※ユネスコエコパークの目的は、生物多様性の保全と人間生活との調和および地域社会の持続的な発展を実現する場とすることです。指定に際しては厳重に保護する核心地域、教育や研修などに利用する緩衝地域、人が生活し活動を営む移行地域と明確に土地利用区分を行います。日本においても、今後も持続可能な地域づくりとして活用が期待される取り組みです。
※MABとはユネスコのプロジェクト、人間と生物圏計画(Man and the Biosphere Program)のことです。単に保護区を線引きするのではなく、人間との関わりのあり方に留意し、原生的自然を厳正に保護する地域から人間の営為が及ぶ地域まで、多重かつ段階的に指定・規制を行い自然保護と人間活動との調和を目的としています。「生物圏保存地域」におけるゾーニングとして、コアエリアを中核に、それを取り囲むバッファーゾーン、外側にマルチプルユースゾーン(保全を基調にした上で、第1次産業に利用もできる地域)という3地域を設定します。